モーレン潰瘍は,角膜に対する自己抗体により起こる周辺部潰瘍で両眼性,片眼性の両方が存在し,周辺部角膜潰瘍の中でも重症疾患に属する。症例によっては角膜穿孔に至るものもあり,病勢に応じた治療が必要となる。
ブドウ球菌性角膜浸潤(カタル性角膜潰瘍とも呼ばれる)は,角膜周辺部にできる潰瘍の中で最も頻度の高いものであり,様々な形の潰瘍が起こりうる。ブドウ球菌に対する過敏反応が病気の本態である。診断がつけば治療は比較的容易だが,感染性潰瘍と診断し治療に難渋していることが多い。
モーレン潰瘍は,角膜輪部に沿って透明帯をつくらず円弧状に生じる潰瘍で,強い細胞浸潤を認める。潰瘍部位の充血が著明で,角膜実質が表面から溶解したように掘れていくのが特徴であり,眼痛を訴える。テリエン角膜変性は,周辺部角膜に円弧状に生じるが炎症所見が少ないことで診断がつく。
ブドウ球菌性角膜浸潤は,マイボーム腺開口部が横切る眼瞼の4時・8時・10時・2時の位置に好発する潰瘍で,細胞浸潤,潰瘍周囲の充血,フルオレセイン陽性,角膜周辺部と潰瘍の間に透明な部分(透明帯)が存在することを特徴とする。感染性角膜潰瘍と所見が類似しているが,眼脂の訴えがないことに注意する。
感染性角膜潰瘍は角膜中央部に,免疫反応は角膜周辺部に発症することが多い,という原則を認識しておきたい。
モーレン潰瘍では,副腎皮質ステロイドホルモン点眼液が治療の主体となるが,眼圧上昇の原因とならないタクロリムス点眼液(保険適用外)を併用することも多い。局所投与で炎症のコントロールのつかない重症例では,サンディミュンⓇカプセル(シクロスポリン)内服を加えることで炎症抑制を図る。潰瘍近傍の炎症の強い結膜を切除する手術(Brown手術)を行うこともある。切除後は強膜の露出を避けるため,表層角膜移植や羊膜移植を併用するほうがよい。炎症が遷延し角膜穿孔をきたした場合は,表層角膜移植術を行う。
ブドウ球菌性角膜浸潤では,まず感染性の角膜潰瘍ではなく免疫反応であることを疑うことが重要となる。ただし,感染性角膜潰瘍であった場合に,副腎皮質ステロイドホルモンを使用してしまうと予後が悪くなる危険性があるので,特徴的な所見の見きわめが大切となる。
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