突発性発疹は,乳幼児の発熱を伴う発疹性疾患であり,human herpesvirus(HHV)-6が主な原因である。HHV-7による発症もみられるが,HHV-6と比較し少ない。他のヘルペスウイルス科のウイルスと同様,初感染後生涯にわたり潜伏感染し,末梢血単核球や唾液などからウイルスが検出される。
本症の主な感染経路は,唾液を介した飛沫・接触感染である。潜伏感染の成立した成人から,未感染の乳児にウイルスが伝播し,5~15日の潜伏期間を経て発症する。したがって,母体からの移行抗体が消失する,生後6カ月以降2歳くらいまでの発症が多い。HHV-7による発症は,やや高年齢(3歳)が多いとされる。
臨床症状としては,3~5日間,40℃に達する発熱が続いた後,腹部から全身に拡大する発疹を呈する。発疹は孤在性で,癒合しない丘疹性紅斑を呈し,3~4日で色素沈着を残さず消退する。HHV-6は神経親和性が強いとされ,10~15%で痙攣を合併する1)。稀に急性脳症などの重症合併症を認める。
罹患した児は,高熱を呈する割に全身状態は良好であり,解熱後に発疹が出現することで臨床診断される。しかし,発疹を認めない有熱期の診断では,慎重な対応を心がける。永山斑(口蓋垂の両側にみられる粟粒大の紅色隆起性病変)が診断の一助となるが,尿路感染症や菌血症などの重症細菌感染症との鑑別を要することが多い。また,大泉門膨隆を呈し,髄膜炎との鑑別が必要となる例もある。脳症合併例などの重症例では,抗体検査や核酸増幅検査などを用い,原因微生物診断を適宜行う。抗体検査は保険適用外となるが,髄液検体を用いたマルチプレックスPCR法による髄膜炎・脳炎パネル検査は,脳炎を疑う症例に対する使用が保険収載されており,HHV-6が検出対象に含まれる。
残り1,008文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する