リポ蛋白(a)[Lp(a)]高値は、スタチン服用例においてもアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクだが、Lp(a)低下がASCVDリスクを低減するというエビデンスは存在せず[Kronenberg F, et al. 2022]、どのように介入するべきかは明らかでない。
一方、Lp(a)高値に伴うASCVDリスク上昇には炎症亢進が関与していると考えられているため[Dzobo KE, et al. 2022]、抗炎症療法には有用性を期待できる。
そして今回、高用量ω3脂肪酸サプリが冠動脈疾患(CAD)を有するLp(a)高値例のLp(a)濃度を低下させ、さらに動脈壁炎症を抑制するという小規模研究が、8月11日、Journal of Clinical Lipidology誌に掲載された。報告者は、豪州・ウェスタンオーストラリア大学のNatalie C. Ward氏ら。
同氏らが解析対象としたのは、コレステロール低下薬服用下でLp(a)高値(>0.5g/L)を認め、かつCADを有していた12例である(うち3例は無症候性)。
平均年齢は58.2歳、10例がスタチン、9例がエゼチミブを服用(重複あり)していた。また7例はアスピリンも併用していた。
これら12例は全例、ω3脂肪酸サプリを12週間服用し、服用前後で18F-FDG-PET/CTを用い、胸部大動脈FDG取り込み(炎症マーカー)を比較した。
サプリ中のω3脂肪酸含有量は1日当たり3.6mgの高用量である。
その結果、ω3脂肪酸サプリ12週間服用後、まずトリグリセライド(-17%)とLp(a)(-5%)が有意に低下し、HDL-Cは有意に増加した(+8%)。
次に炎症マーカーを見ると、服用開始前FDGのSUV(standardized uptake value)最大部位における大動脈壁へのFDG取り込みは、ω3脂肪酸サプリ12週間服用後に4%、有意に低下していた。
同様に、SUV最大部位隣接部位まで含めて比較しても、ω3脂肪酸サプリ12週間服用後、やはりFDG取り込みは有意に低下しており、低下幅は25%に及んだ。
なおこれらの減少は、服用スタチンの強度に影響を受けていなかった。
一方、血中hsCRP濃度はω3脂肪酸サプリ12週間服用後、減少傾向を示すものの服用前に比べ有意な低値とはならなかった。
次にω3脂肪酸の種類別に大動脈壁炎症との関連を解析すると、サプリ服用中のEPA濃度はSUV最大値と有意に逆相関していたが、DHAとSUV最大値間には有意な相関を認めなかった。またトリグリセライド濃度も、SUV最大値とは相関していなかった。
同様に、Lp(a)濃度と有意な逆相関を認めたのもEPAのみだった。
Ward氏らはEPAが動脈壁に対し直接の抗炎症作用を発揮した可能性が最も高いと考察する一方、EPAがLp(a)代謝への影響を介して動脈壁炎症を抑制した可能性も否定できないとしている。いずれにせよ、Lp(a)高値例に対するEPAの有用性を検討する予備的ランダム化比較試験が待たれる。
本研究への資金提供については記載がなかった。