【質問者】浅野浩一郎 東海大学医学部呼吸器内科学教授
【肺非結核性抗酸菌症にはリファマイシン系薬を用いずに治療し,アゾール系薬も併用する】
非結核性抗酸菌(nontuberclous mycobacteria:NTM)は人から人に感染しないと言われていますが,高齢化と診断技術の進歩により,近年,肺NTM症の増加が指摘されており,わが国ではその約90%をMycobacterium avium complex(MAC)による肺MAC症が占めると指摘されています。
空洞形成を伴う結核に類似した病型を呈する例もありますが,多くは気管支拡張を伴います。これら非可逆的な構造破壊を伴う呼吸器系の病変にアスペルギルスの分生子が定着し,その一部は感染に至って慢性型のアスペルギルス症となり,予後不良に関与することが報告されています。そのため,肺MAC症と肺アスペルギルス症の両者の治療を要する場合もあります。
ここで問題になるのが,肺MAC症に用いられるリファマイシン系薬およびマクロライド系薬と,肺アスペルギルス症に用いられるアゾール系の抗真菌薬との薬物相互作用です。リファマイシン系薬により薬物代謝酵素CYP3A4が誘導されるため,アゾール系薬の代謝が亢進し血中濃度が低下する一方で,マクロライド系薬は薬物代謝酵素CYP3Aを阻害するため,アゾール系の抗真菌薬の血中濃度が上昇します。そのため,リファマイシン系薬やマクロライド系薬とアゾール系薬の併用が困難になります。したがって,両者を合併した場合にはいずれの治療を先行するか判断が難しいです。
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