心血管系(CV)疾患既往なく、スタチン非服用で「LDL-C<70mg/dL」が達成できていた例であっても、脳梗塞を来した場合はスタチンを用いたほうが短期間のCV転帰は良好である可能性が、韓国から報告された。ただしスタチンによる「血管系イベント」減少は認められず、抑制されたのは主に「死亡」だった。また懸念される脳出血リスクの上昇は認められなかった。
9月8日付のJournal of the American Heart Association誌で韓国・全南大学校のJoon-Tae Kim氏らが報告した。
ランダム化試験"SPARCL"からLDL-C「≧100mg/dL」脳卒中(梗塞・出血)初発例に対しては、スタチンを用いて平均でLDL-C「73mg/dL」達成によるCVイベント抑制が示されていたが、LDL-C「<70mg/dL」で脳梗塞初発を来した場合、スタチンが有用かどうか、明らかではなかった。
対象は、韓国レジストリに登録された、脳梗塞(一過性脳虚血発作を含む)初発から7日以内、かつLDL-Cがすでに「<70mg/dL」だった2850例である。脳梗塞初発前にCV疾患既往のあった例、あるいはスタチンを服用していた例は除外されている。
また全例、米国ガイドラインに準拠した脳梗塞後治療を受けていた。
平均年齢は69.5歳、男性が63.5%を占めた。脳梗塞後搬入時のLDL-C値平均は56.6mg/dLだった。
これら2850例を、入院中にスタチン服用を開始した群(2115例)と開始しなかった群(735例)に分け、その後3カ月間の「脳卒中(脳梗塞・脳出血)・心筋梗塞・全死亡」(重篤CVイベント)の発生を観察した。
両群の背景因子はIPTW法を用いて調節し、結果、調節後の背景因子には群間差を認めなかった。
IPTW法補正後の重篤CVイベント発生率はスタチン「開始」群で7.6%であり「非開始」群の13.1%に比べ有意に低値となった(P<0.001)。
両群の発生率曲線は比較開始直後から大きく乖離を始めたが、およそ20日以降は群間差の拡大を認めなかった。
「開始」群におけるCVイベントハザード比は0.54(95%信頼区間:0.42-0.69)である。
ただし有意減少を認めたのは「総死亡」のみで、「脳卒中」「心筋梗塞」は減少傾向にとどまった。
同様に「脳出血」発生率も、両群間に差を認めなかった(0.1% vs. 0.09%)。
なおIPTW法補正前のCVイベント「粗」発生率もスタチン「開始」群(6.7%)で、非開始群(21.5%)よりも有意に低かった。
Kim氏はスタチン「開始」群におけるCVイベント(主として総死亡)抑制作用は、スタチンによる「LDL-C低下作用」ではなく「多面的作用」の結果だろうと考察している(ただしその根拠は詳述されていない)。
本試験は韓国政府機関、並びに全南大学から資金提供を受けた。