再生不良性貧血は,何らかの原因で骨髄の造血幹細胞が減少し,最終的には末梢血のすべての血球が減少する(汎血球減少)「良性の骨髄不全症」である。造血幹細胞自体の質的異常に起因する例もあるが,大部分の患者では,免疫学的機序が発症に関与している。
Hb値10g/dL未満,好中球数1500/μL未満,血小板数10万/μL未満のうち少なくとも2つ以上を満たし,骨髄が低形成で,汎血球減少をきたす他の疾患が除外されれば,再生不良性貧血と診断する。免疫病態が関与した再生不良性貧血は,貧血や白血球減少の出現より血小板減少が先行していることが多い。診断時に血小板数が10万/μL以上の場合は,他の疾患を慎重に鑑別する。
免疫抑制療法と同種骨髄移植のどちらを選択するかは,網赤血球数・好中球数・血小板数の3つを指標とした重症度と年齢に病態を加味して決める。たとえ輸血を必要としない例であっても,安易に経過観察とはせずに,早期診断・早期治療を心がける。
輸血を必要としないstage 1およびstage 2a例では,血小板輸血を必要とする抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(ATG)の投与は避ける。血小板数が10万/μL未満ならシクロスポリン(CsA),10万/μL以上なら蛋白同化ステロイドを第一選択薬とする。反応が乏しい場合は,エルトロンボパグ(EPAG)やロミプロスチム(ROMI)を追加する。
輸血を必要とするstage 2b以上では,ATG+CsA+EPAG±顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)併用による免疫抑制療法か同種骨髄移植が選択される。難治例では,EPAGをROMIに変更する。
貧血症状があれば,Hb値6~7g/dLを目安に赤血球輸血を行う。出血傾向があれば,血小板数5000~1万/μLを目安に血小板輸血を行う。好中球数が500/μL未満で重症感染症合併リスクが高い例や,実際に発症している例には,G-CSF投与を考慮する。頻回の赤血球輸血による輸血後鉄過剰症例には,輸血総量とフェリチン値を指標に鉄キレート薬であるデフェラシロクスを併用する。
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