前眼部の虹彩および毛様体に限局した前部ぶどう膜炎であり,後眼部の脈絡膜には炎症を認めない。解剖学的病名であり,原因疾患については問わず,感染性と非感染性に大きくわけられる。ウイルスや細菌,真菌などの感染によるものや,ベーチェット病や強直性脊椎炎,サルコイドーシス,若年性関節リウマチなどの全身疾患に伴うもの,原因不明の一時的なものなど,様々である。
毛様充血や角膜後面沈着物,前房の炎症細胞およびフレアを認め,重度の場合は前房蓄膿がみられる。サルコイドーシスやVogt-小柳-原田病,ベーチェット病の三大ぶどう膜炎では脈絡膜にも炎症を生じて,汎ぶどう膜炎を呈することが多い。
感染性の場合にステロイドのみで治療すると悪化するため,感染症かどうかの判断が重要である。全身状態や全身疾患の合併の有無について把握し,治療前に感染症などを調べる採血検査や,必要に応じて胸部X線検査などの画像検査を行う。ヘルペスなどの感染症を疑った場合は,前房水PCR検査を検討する。これらの結果と,臨床症状や検眼鏡所見を組み合わせ,総合的に診断する。
ステロイド点眼薬による消炎治療が基本であり,前房炎症の程度に合わせてリンデロンⓇ0.1%点眼・点耳・点鼻液(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム)を1日1回~1時間ごとに用いる。点眼薬のみで炎症コントロールが難しい症例では,点眼薬に加えて即効性の高い水溶性ステロイドのデキサートⓇ注(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)の結膜下注射を行う。
虹彩後癒着の予防・解除のための散瞳点眼薬を併用し,主にミドリンⓇP点眼液(トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩)を1日1~3回用いる。新鮮な虹彩後癒着の場合は解除できることが多いが,陳旧性の虹彩後癒着は散瞳点眼薬では解除できないので,そのまま経過をみる。
感染性の場合,たとえば単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)や水痘帯状疱疹ヘルペスウイルス(varicella zoster virus:VZV)による虹彩毛様体炎では,抗ヘルペス薬の外用や内服治療も行う。サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)による虹彩毛様体炎では,保険適用はないが,抗CMV薬〔デノシンⓇ(ガンシクロビル)〕点眼の併用がよいと考えられている。
強直性脊椎炎や若年性関節リウマチなどの全身疾患の症状のひとつとして虹彩毛様体炎がみられる場合は,膠原病内科や整形外科,小児科との連携を行う。
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