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糖尿病網膜症[私の治療]

No.5189 (2023年10月07日発行) P.46

齋藤理幸 (北海道大学大学院医学研究院眼科学教室診療講師)

石田 晋 (北海道大学大学院医学研究院眼科学教室教授)

登録日: 2023-10-04

最終更新日: 2023-10-03

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  • 糖尿病網膜症は,長期間累積した高血糖,酸化ストレス,慢性炎症によって網膜細小血管障害が生じ,血管内皮細胞が障害されることによって,①血管閉塞・虚血,②血管透過性亢進,③血管新生,の病態を生じる。眼底には,これらの細小血管の形態的・機能的変化を反映した多彩な変化が観察される。

    ▶診断のポイント

    診断は主に眼科医による精密眼底検査によって行われる。2017年の米国糖尿病学会(ADA)による指針1)では,光干渉断層計(OCT)撮影による網膜厚測定と網膜内病変の検出,広視野眼底撮影を用いた精密眼底検査を含む包括的な検査を行うことが推奨されている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    糖尿病網膜症は,黄斑浮腫などの合併症を生じない限り,増殖網膜症に至るまで自覚症状に乏しい。牽引性網膜剝離などの合併症が生じて自覚症状が出現してから眼科的治療を行っても,視機能の改善が得られない場合が多く,定期的な検診による早期発見が非常に大切である。また,内科的な治療が網膜症の発症・悪化の抑制につながるため,眼科サイドからも糖尿病網膜症について患者によく説明し,内科的治療への動機づけを行うことも大切である。

    内科的治療としては,大規模臨床研究によってインスリンやスルホニル尿素(SU)薬でHbA1cを7%以下に抑える厳格な血糖コントロールによって,糖尿病網膜症の進行を予防できることが示されている。

    【治療上の一般的注意】

    急激な血糖コントロールによって,一時的に糖尿病網膜症が悪化することが報告されている2)。糖尿病の治療初期には,HbA1cの値を1カ月に0.5~1.0%を超えないように降下させることが推奨されており,既に網膜症を発症しているような症例や無治療期間が長い症例では,HbA1cが安定するまでは短い間隔での経過観察が必要である。また,妊娠は網膜症の急速な進行と関連しており,妊娠を計画している既存の糖尿病の女性にはカウンセリングを行うとともに,妊娠前(既に妊娠している場合は妊娠初期)に初回の眼科検査を受けることが望ましい。

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