精神疾患で在宅医療が必要な場合とは,疾患の種類によらず,以下のような状態にある場合である。①外出することに強い不安や恐怖があり,定期的な通院が困難,②生活のリズムが大きく乱れ,気力や体力が失われ,定期的な通院が困難,③治療が必要であるにもかかわらず,その認識がなく通院の意欲が乏しい,④身体疾患を合併しており,外出が困難。総じて,患者は自宅にいるか,ごく近隣への外出ができるだけといった「ひきこもり」という状態にある。ひきこもり,孤立しているがゆえの二次的な自尊心の低下,否定的な思考にとらわれている場合もしばしばである。
治療とは,患者や家族と関係づくりを進めながら,生物・心理・社会的(bio・psycho・social)関与を行い,患者の生活が地域社会の中で維持・発展できるように支援することである。そこには狭義の医学的治療だけでなく,心理的サポート,福祉的サポートなども含まれる。
精神疾患は,様々なストレスにより心身のバランスを崩した状態ととらえられる。アセスメントは,生物・心理・社会的に包括的に行う必要がある。
生物(学)的:「睡眠の状態はどうか?」「日内リズムは保たれているか?」「消化器症状(下痢・便秘)は?」「血圧・脈拍は?」「倦怠感は?」「全体的な体力は?」などをアセスメントする。精神疾患といえども,身体の状態についての把握は重要である。また,後述するトラウマ(心的外傷体験)と関連して,聴覚・視覚などの五感の感覚過敏の有無を確認することは有用である。
心理的:体調を崩したことについて,どのような物語を持っているかに耳を傾ける。安心して話せる関係が確立してくると,いじめや虐待,喪失体験,役割変化,対人関係の不調などによるトラウマを持っていることが語られる場合も多い。そのような人生の苦労のプロセスで現在の状態があると汲み取ることは,治療的である。その上で,気分の変動の激しさなど,今,どのような心理状態が苦悩の中心にあるのかを把握する。
社会的:精神疾患の発症と前後して,休職・失職,中退・退学,別居・離婚,などの社会的変化が起きていることも多い。それとともに経済的な危機,対人関係のネットワークの喪失なども起きている。これらの把握はリハビリテーションを検討する上で必要である。
残り1,342文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する