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スティーブンス・ジョンソン症候群(眼所見)[私の治療]

No.5193 (2023年11月04日発行) P.49

外園千恵 (京都府立医科大学眼科学教室教授)

登録日: 2023-11-01

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  • スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)は,突然の高熱とともに全身の皮膚と粘膜に発疹・びらんを生じ,呼吸不全や多臓器不全により,死に至ることもある重篤な疾患である。ほとんどが薬剤投与を契機に発症し,重症薬疹とも呼ばれる。急性期に高度な炎症を眼表面(角膜および結膜)に生じ,偽膜や上皮欠損(びらん)を伴う。皮膚および全身症状が軽快した後,高度ドライアイと視力障害が後遺症となる。国内で毎年150~200人程度が新規に発症する。重症型である中毒性表皮壊死症(TEN)も眼病変は同様である。

    ▶診断のポイント

    急性期:全身症状(高熱,発疹)とほぼ同時または先行して両眼の結膜充血を生じる。偽膜形成と上皮欠損(角膜びらん,結膜びらん)は本症候群に特徴的な所見である。生検で表皮の壊死性変化を認めれば,臨床所見と合わせて確定診断となる。

    慢性期:角膜上皮幹細胞疲弊により角膜への結膜侵入,血管侵入,角膜混濁をきたす。涙腺導管の閉塞による涙液分泌不全,結膜の杯細胞消失によるムチン分泌不全に加えて,マイボーム腺機能不全をきたして高度ドライアイとなる。瞼球癒着,睫毛乱生,眼瞼内反などが存在する。重症例では眼表面上皮が皮膚のように角化する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性期:眼表面の炎症を抑制することと,二次感染防止に努める。迅速に診断することが重要であり,眼表面の偽膜形成と上皮欠損を認める場合には,眼表面の消炎を目的とした副腎皮質ステロイドパルスと眼局所へのベタメタゾン投与が推奨される。ただし,結膜囊培養検査を行い,抗菌薬を併用して感染予防を図る。遷延性上皮欠損に至ると,角膜感染症,角膜穿孔を合併するリスクが高くなり,視野予後が不良である。

    慢性期:対症療法としての眼表面の管理が治療の主体となる。定期的な経過観察を行い,睫毛抜去,抗菌薬点眼,ドライアイ治療を行う。軽度の炎症が継続する症例が多く,低濃度のステロイド点眼を併用するが,ドライアイ治療で用いられるレバミピド点眼には消炎作用もあり,低濃度ステロイドの代わりにレバミピド点眼で管理できることも多い。近年SJS用に開発された輪部支持型コンタクトレンズ(サンコンKyoto-CS)は,SJSの視力改善と自覚症状の改善に有用である。眼表面の癒着が進行した症例では,培養自家口腔粘膜上皮シート移植,羊膜移植による眼表面再建が適応となる。

    【治療上の一般的注意&禁忌】

    急性期,慢性期ともにMRSAなどの薬剤耐性菌を全身ないし眼局所に保菌する患者が多い。結膜囊培養を行い,細菌を検出したら感受性のある抗菌薬を点眼する。

    ステロイド点眼の二次障害として緑内障を生じうる。角膜混濁のために視神経乳頭所見が不明,視力障害のために視野検査が困難,角膜変形のため正確な眼圧検査ができない,といった要因があり,緑内障を検出しにくい。定期的な視野検査で緑内障を見逃さないようにする。

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