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【文献 pick up】eGFR低下のHFrEFでもMRAの有用性は変わらず?―スウェーデン大規模レジストリ解析/Eur J Heart Fail誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-11-01

最終更新日: 2023-11-01

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推算糸球体濾過率(eGFR)が「30mL/分/1.73m2」を下回っていても、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は左室駆出率(EF)の低下した心不全(HFrEF)に有用である可能性が明らかになった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のFederica Guidetti氏らが大規模レジストリ解析の結果として10月5日、European Journal of Heart Failure誌で報告した。

MRAはHFrEF治療薬としてRALESEMPHASIS-HFという確固たるエビデンスがあるものの、重度腎機能低下例は除外されていたため、これらに対する有用性は不明だった。そのため各国ガイドラインでも推奨内容に差があった(米国は非投与、欧州は減量が原則。わが国ガイドラインは慎重な使用を推奨)。

【対象】

今回解析対象となったのはスウェーデン在住で「EF<40%」だったHFrEF患者3万3942例である。全国HFレジストリ(Swedish HF Registry)から抽出した。レジストリへの登録時期は、MRANYHA分類「Ⅱ-Ⅳ」度HFに推奨されるようになった2012年以降に限った。

年齢中央値は74歳、29%が女性だった。

【方法】

これら3万3942例をeGFRの高低で4群に分け、MRA服用が「腎イベント」、ならびに「死亡」と「全入院」リスクに与える影響を、1年間のスパンで検討した。

4群の内訳は、

eGFR「≧60mL/分/1.73m2群(62%)、「4559」群(20%)、「3044」群(13%)、「<30」群(5%)―だった。

【結果】

MRA服用状況

観察開始時のMRA服用率は、eGFRが低くなるほど減っていく傾向を認めた(5432%)。

MRA中止率はeGFRの高低を問わず915%で一貫していたが、観察開始後MRA開始率はeGFRが高い群ほど増える傾向があった(5→13%)。

なおスウェーデンでは半量未満のMRAを服用するHFrEF患者は10%強しかいないため[Stolfo D, et al. 2022]、本研究ではMRA「減量の有無」を検討していない。

・腎イベント

1年間の腎イベント(透析導入、腎死、腎不全入院、高K血症入院)発生率は、MRA「服用」群:14.6/1000人年、「非服用」群:17.5/1000人年だった。

「服用」群における未補正ハザード比(HR)は0.8395%信頼区間:0.79-0.88)となり、この傾向はeGFRの高低を問わず一貫していた(交互作用P=0.40)。

ちなみにeGFR「<30」群に限っても「服用」群におけるHR0.880.77-1.01)である。

・死亡/全入院

死亡、全入院も同様に、MRA「服用」群で有意なリスク低下を認め、この傾向もeGFRの高低に影響を受けていなかった。

なおeGFR「<30」例のMRA「服用」群における「死亡」HR0.930.81-1.08)、「全入院」も0.960.85-1.08)である。

【結論】

Guidetti氏らによる結論は「重度慢性腎臓病患者でもMRA中止は推奨されないのではないか」というものだ。ただし「臨床検査値をしっかり調べられるなら」としっかり付記されている。

本研究は、欧州連合による”Horizon Europe programme”と”Swedish Heart and Lung Foundation”から資金提供を受けた。

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