尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis:RTA)は,腎機能が低下していないにもかかわらず,水素イオンの排泄や重炭酸塩の再吸収が障害され,代謝性アシドーシスを呈する一連の疾患群である。アニオンギャップ(AG)正常で高Cl性代謝性アシドーシスを呈することが特徴である。RTAはその病態により,Ⅰ型(遠位型),Ⅱ型(近位型),Ⅳ型(アルドステロン作用低下型)に分類される。一次性(遺伝性)RTAは小児に多く,成人ではシェーグレン症候群や糖尿病に伴う二次性RTAが多くみられる。
AG正常の代謝性アシドーシス(高Cl性代謝性アシドーシス)または原因不明の高カリウム血症を呈する患者ではRTAを考慮する。動脈血液ガス,血清および尿中電解質,BUN,クレアチニン,尿pHを測定し,表に従って鑑別診断を進める。乳幼児や小児では,遺伝性(一次性)の原因を考慮すべきであるが,成人では,併存疾患の同定が鑑別診断において重要である。
対症療法による酸血症と電解質異常(主にK異常)の治療を行う。並行して基礎疾患の診断・治療を行う。
酸血症の補正には炭酸水素Naが用いられるが,特にⅡ型では大量投与が必要になることがある。小児では,補正が不十分だと成長障害を悪化させる可能性があるため,注意が必要である。成人においても,酸血症が長期的には骨病変を引き起こす可能性があるため,補正が必要である。
Ⅰ型では,十分なKの補充が必要である。高用量のKClは血漿Clの上昇とHCO3-の低下を誘発して酸血症を悪化させるので,L-アスパラギン酸Kまたはグルコン酸Kを投与すべきである。尿路結石を合併している場合は,クエン酸K・クエン酸Naを選択する。
Ⅳ型の高カリウム血症では,まず食事によるK制限を行うが,コントロールが困難な場合は,ジルコニウムシクロケイ酸Naやポリスチレンスルホン酸Ca,ポリスチレンスルホン酸Naを適宜投与する。Ⅳ型では特に糖尿病や高血圧の合併が多く,RAS阻害薬投与による高カリウム血症や,炭酸水素Na投与に起因するNa負荷による体液貯留および高血圧にも注意が必要である。
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