東アジア人では急性冠症候群(ACS)へのPCI後亜急性期までの心臓リハビリテーション(心リハ)開始により、その後1年間の心筋梗塞(MI)リスクが相対的に4割近く低下する可能性が示された。韓国・延世大学校のIn Sun Song氏らが11月6日、ネイチャー社発行のScientific Reports誌で報告した。
東アジア人におけるPCI後亜急性期心リハは、QOL改善における良好な費用対効果が報告されているが[Yu CM, et al. 2004]、わが国における施行率は決して高くないようである(院内45.9%、外来8.1%)[Kanazawa N, et al. 2017]。
今回の解析対象となったのは、韓国在住でACS初発に対するPCI後30日間以上生存した単施設2988例である。PCI既往、脳卒中既往のある例、さらに国民健康保険以外を利用した例は除外されている(集団の同一性維持のため)。
性別を見ると「男性」が75.1%を占めた。
年齢分布は「59歳以下」が35.5%、「60-69歳」は30.7%、「70歳以上」が33.8%だった。
これら2988例中、38.7%が退院後30日以内に心リハ・プログラムに参加していた。
そこで、心リハ「参加」群(1156例)と「不参加」群(1832例)に分け、退院後1年間の「MI」「脳卒中」発症リスクを比較した。
比較にあたっては背景因子、ACS治療などの違いを可能な限り補正した。
その結果、退院後1年間の「MI」発生率は全体で11.3%、「脳卒中」は1%だった。
「心リハ」の有無で比較すると、心リハ「参加」で「不参加」に比べ「MI」リスクは有意に低くなっていた(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53-0.86)。
一方、「脳卒中」リスクは減少傾向にとどまった(HR:0.74、95%CI:0.33-1.70)。
興味深いのは、「心リハ」の種類ごとに「MI抑制」作用を見た解析である。
「運動」のみではMIリスクは有意に減少せず、「運動+教育」で有意な抑制を認めた(HR:0.42、95%CI:0.27-0.65)。
なお「運動」を伴わない「教育」のみでもMIリスクは有意に低値となっていた(HR:0.42、95%CI:0.31-0.59)。ただしSong氏らはこの差についての考察を示していない。
本研究に対する資金提供の有無については開示がなかった。