患者に自覚症状はないものの、自由行動下でデバイスにより検出された心房細動(AF)、これに対して抗凝固療法を考慮すべきだろうか。少なくとも現時点ではまだ、積極的に支持するエビデンスはないようだ。ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析から明らかになった。カナダ・McMaster大学のWilliam F. McIntyre氏らが11月12日、米国心臓協会(AHA)旗艦誌であるCirculationで報告した。
植え込み式デバイスやウェアラブル・デバイスを用いたAF検出率上昇が報告される一方、そのようなAFに対する抗凝固療法の有用性は明らかでなく、介入の是非には従来から疑問符がついていた[Varma N, et al. 2021]。
メタ解析の対象とされたのは、植え込み式デバイスで検出された無症候性AF例にするDOACの有用性を、非抗凝固療法と比較したRCTである。NOAH-AFNET6試験と、11月のAHA学術集会で報告されたばかりのARTESIA試験の2試験が該当した。
NOAH-AFNET6試験では脳卒中リスク因子を有するAF 2536例を対象にエドキサバンとアスピリン/プラセボが比較され、ARTESIA試験は「CHA2DS2-VAScスコア≧3」のAF 4021例を対象にアピキサバンとアスピリンを比較した。
観察期間は前者が21カ月(中央値、早期終了)、後者は平均3.5年である。
その結果、本解析の1次評価項目である「脳梗塞」発生率はDOAC群で対照群に比べ3~6/1000人年の有意低値と推計された。
一方、大出血はDOAC群で対照群に比べ、7/1000人年の有意高値となった(相対リスク:1.62、95%信頼区間[CI]:1.05-2.5)。ただし致死的大出血リスクには有意差はない(同:0.79、0.37-1.69)。
また「心血管系死亡」のDOAC群における相対リスクは0.95(95%CI:0.76-1.17)、「総死亡」も1.08(同:0.96-1.21)で、いずれも対照群と有意差はなかった。
デバイス検出無症候性AFに対する抗凝固療法の是非を考える際には、患者の意向を考慮の上、上記のリスク・ベネフィットを勘案する必要があるとMcIntyre氏らは考察している。
本解析は外部からの資金提供を受けていない。
NOAH-AFNET6試験はDaiichi Sankyo EuropeとGerman Center for Cardiovascular Research、ARTESIA試験はBristol-Myers Squibb–Pfizer AllianceとCanadian Institutes of Health Researchから資金提供を受けた。