近年, monoclonal gammopathy of renal significance(MGRS)という疾患概念が新たに提唱され,注目を浴びています。その一方で,どのようにMGRSを診断し,治療を行うべきかに悩んでいます。診断,治療についての明確なプロセスについて,東京慈恵会医科大学附属病院・鈴木一史先生にご解説をお願いします。
【質問者】関口直宏 災害医療センター血液内科科長/治験管理室長
【単クローン性免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)+尿蛋白で疑い,腎生検で確定診断し,抗骨髄腫薬で治療する】
MGRSは,M蛋白が腎障害の病態形成に強く関連した疾患群です1)2)。MGRSを形成する腫瘍クローンは,M蛋白産生が微量でその腫瘍細胞割合も少ないことから,骨髄腫への進展という観点からは低リスクであったとしても,M蛋白の腎障害への関与を考えると治療対象になると考えられるようになってきました。
MGRSの診断には腎生検が必須です。慢性腎臓病+MGUSに対して腎生検を実施した患者の後方視的解析では,40%がMGRSであり,最多の組織型はALアミロイドーシス(以下,AL)43.8%でした。MGRSの有意な予測因子は,1.5g/日以上の尿蛋白(オッズ比:3.45),血尿(オッズ比:2.94),血清フリーライトチェーン比異常(オッズ比:11.04)でした3)。MGUSは年に1%の頻度で骨髄腫に進展するとされますが,MGRSはMGUSと比較して骨髄腫への進展リスクが3.3倍高いと報告されています4)。
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