原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)は,造血幹細胞レベルで生じた遺伝子変異により,巨核球や好中球系細胞などが骨髄でクローン性に異常増殖する骨髄増殖性腫瘍である。病初期は骨髄の線維化はほとんど認めず前線維化期/早期と呼ばれ,自他覚症状に乏しい。進行すると骨髄の線維化が著明な線維化期となり,全身倦怠感,発熱,体重減少などの全身症状,巨大脾腫を呈する。3年生存率59%と予後不良であり,主な死因は急性白血病への病型移行,出血,感染症である。
線維化期にみられる貧血,血小板減少,末梢血に変形した赤血球(標的細胞),骨髄芽球,赤芽球の出現(白赤芽球症),巨大脾腫を契機に診断されることが多い。骨髄生検所見は,病初期は過形成,進行期には高度の線維化を示す。骨髄穿刺検査ではdry tapで骨髄液が穿刺できないことが多い。80%以上の患者にJAK2,CALR,MPL変異のいずれかが認められ診断に有用であるが,これらの変異はPMFに特異的ではなく,真性多血症,本態性血小板血症にもみられることに留意が必要である。
前線維化期/早期で無症状の場合は経過観察を,症状がある場合は対症療法を行う。血栓症既往を有する場合や心血管リスクのある場合,低用量アスピリンの投与を行う1)。
線維化期では,年齢>65歳,発熱・夜間盗汗・体重減少などの全身症状が持続,Hb<10g/dL,白血球数>2万5000/ μL,末梢血の芽球≧1%,の5項目のリスクファクターのうち,該当する個数により低リスク,中間-Ⅰリスク,中間-Ⅱリスク,高リスク(それぞれ0,1,2,3項目以上該当)に分類する。わが国の生存期間中央値は,低リスク群18.6年,中間-Ⅰリスク群5.5年,中間-Ⅱリスク群3.2年,高リスク群2.4年である2)。
低/中間-Ⅰリスク群では長期予後が期待できるため,無症状の場合,経過観察を行う。
中間-Ⅱ/高リスク群の予後は不良なため,若年者で,合併症がなく適切なドナーが得られる場合,造血細胞移植を検討する。移植後の4年生存率は50%前後である。造血細胞移植は治癒的治療法であるものの,PMFは高齢者に好発することから適応は限られてくる。移植の適応にならない中間-Ⅱ/高リスク群,および脾腫に伴う症状や持続する全身症状を有する低/中間-Ⅰリスク群には,JAK阻害薬であるルキソリチニブが,脾腫,症状の改善,予後の改善に有用である1)。
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