近視とは無調節の状態で眼に入光した平行光線が,網膜より前方に焦点を結ぶ屈折状態である。眼球の屈折力と眼軸長のアンバランスにより生じ,眼軸長が相対的に長いために生じる(軸性近視)。
世界的に近視患者が急増しており,発症年齢が早いほど将来的に近視の程度が強くなる。また,度数に応じて緑内障や網膜剝離,黄斑症など失明に至る疾患のリスクが高くなる。そこで,学童期から積極的に近視抑制治療を行うことが国際的に推奨されるようになった。
近視評価には通常オートレフラクトメータが用いられ,焦点距離f(m)の逆数であるジオプトリー(diopter:D)という単位で表される(1/f=D)。小児ではスポット™ビジョンスクリーナーでの測定が簡便であり,3歳児健診でも広く応用されている。小児や若年者では測定時に調節が入りやすく,近視を過大評価することが少なくない。必要に応じて調節麻痺下(1%シクロペントラート点眼,30~60分後)の屈折を測定する。
程度に応じて,弱度近視(-0.5~-3.0D),中等度近視(-3.0~-6.0D),強度近視(-6.0D~)に分類される。
マイナスレンズで近視を矯正することにより,焦点の位置を網膜上に移動させる。眼鏡のほかコンタクトレンズ(CL)での矯正も広く行われ,ハードCL,ソフトCL,オルソケラトロジー(OK),強膜レンズなど様々な種類が使用されている。OKは特殊形状のハードCLを用いて積極的に角膜形状を変化させる治療であるため,安全性には十分に配慮すべきで,実施にあたってはガイドラインの順守が望まれる1)。
古くはradial keratotomy(RK)が行われていたが,近年ではエキシマレーザーを用いるlaser in situ keratomileusis(LASIK),photorefractive keratectomy(PRK),laser-assisted subepithelial keratectomy(LASEK),フェムトセカンドレーザーを用いるsmall incision lenticule extraction(SMILE)などが施行されている。実施に際しては,最新の屈折矯正手術ガイドラインに沿って行われるべきある2)。
0.01~0.05%の低濃度アトロピン(AT)点眼は国際的に広く用いられており,その有用性が多数の臨床研究で確認されている。また,OKの眼軸長抑制効果に関してもエビデンスが積み上げられている。同様に,多焦点CLに関しても近視進行抑制効果が複数のレンズで確認され,海外では承認レンズが上市されている。
特殊デザイン眼鏡に関しては,香港で開発されたdefocus incorporated multiple segments(DIMS)眼鏡が諸外国で承認され,臨床応用されている。また最近では,レッドライト治療(赤色光を1日2回眼部に照射する治療)の強い近視進行抑制効果が確認され注目を浴びている。しかし,わが国においてはいずれも未承認である。
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