【概要】終末期医療の体制整備に向けた初のモデル事業が始まった。国立長寿医療研究センターが中心となり全国10医療機関で実施する。21日に説明会が開催された。
このモデル事業の名称は「人生の最終段階における医療体制整備事業」。患者の意思を尊重した終末期医療の体制を整備するため、終末期医療に関する相談員を医療機関に配置し、患者の相談に応じて情報提供や意思決定支援などを実施する。国立長寿医療研究センターを中心に、応募があった72医療機関から選ばれた10医療機関(別掲)が参加する。
相談員は、医師、看護師、メディカルソーシャルワーカーなどを想定し、長寿医療研究センターが実施する研修会に参加する。研修会では、厚労省が2007年に作成した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に準拠して、患者の意思決定支援のプロセスを学ぶ。
参加医療機関は来年3月にかけて、相談員のEラーニング講習会、医療ケアチームと臨床倫理委員会の設置、患者・家族へのスクリーニング調査などを実施。このうち、スクリーニング調査では、相談員について「患者様の今や未来における病気や生活に関する気がかりについて相談を対応する専門のスタッフ」と紹介した上で、相談員に会ってみたいかどうかを質問。会いたいと回答した患者に介入するほか、これ以外の介入方法も検討する。
●指示書作成が目的にならないよう注意喚起
21日に厚労省が開催した説明会では、国立長寿医療研究センターの担当者が、医療内容を記す事前指示書の作成に関して「(項目の記入が)脅迫的になる可能性もあるので、口頭でのやわらかい意思決定でも良いと考えている」と述べ、事前指示書作成自体を目的としないよう注意を促した。
説明会では、参加医療機関から現状も報告された。この中では、「家族の意見がバラバラで判断に悩む」「安定期に事前指示書を作成していることは稀」「緩和医療になると、『負け』という認識が医療者に強い」など、終末期医療に悩む声が相次いだ。
なお、厚労省は2015年度もモデル事業を実施する予定。
【記者の眼】説明会では、医療者が患者にとって最適な終末期医療を模索している状況が報告された。今後到来する多死社会において、看取りのあり方は国民全体が共有すべき課題だ。事業の成果が全国の医療機関に還元されることを期待したい。(N)