2型糖尿病(DM)の8人に1人は生活習慣改善により(必ずしも永続的ではないにしろ)DM「寛解」は可能で、かつ1度でも「寛解」すると「非寛解」例に比べ心腎疾患リスクが約3~5割低下するようだ。減量生活指導と糖尿病教育によるDM寛解作用を比較したランダム化比較試験(RCT)"Look AHEAD"の追加解析から明らかになった。米国疾病予防管理センターのEdward W. Gregg氏らが1月18日、Diabetologia誌で報告した。
Look AHEAD試験の対象となったのは、BMI「≧25kg/m2(インスリン使用例では「≧27kg/m2」)」で45歳以上の2型DM 5145例である。極度の腎機能低下例や運動不可例などは除外されている。DM罹患期間中央値は5年、93%が血糖降下薬を使用していた。
これら5145例は「減量生活指導」(カロリー・脂質制限+身体活動増加)群と「DM教育」群にランダム化され、12年間追跡された(介入は強度を弱めながら12年間継続)。今回の解析対象はこれら5145例中、DM「寛解」データが不備、あるいは減量手術を受けた例を除外した4488例である。
検討されたのは、(1)12年間にわたる2型DM「寛解」率と、(2)「寛解」が高リスク慢性腎臓病(CKD)と脳心イベント(MACE、論文ではCVD)に及ぼす影響―である。「寛解」の定義は「血糖降下薬なしでHbA1c<6.5%」とされた。
・2型DM寛解達成率
4488例中569例(12.7%)が試験期間中に1回は2型DM「寛解」と判定された。なお「減量生活指導」群における「寛解」判定率が試験開始1年後の11.2%から漸減し12年後には3.7%まで低下したのに対し、「DM教育」群では一貫して2%前後で推移した。
・「寛解」とCKD/MACEリスク
これら2型DM「寛解」を1度でも経験した569例では非寛解例に比べ、高リスクCKD、MACEとも発症リスクは有意に低くなっていた。諸因子補正後の非寛解例に対するハザード比(HR)は高リスクCKDで0.67(95%信頼区間[CI]:0.52-0.87)、MACEで0.60(95CI:0.47-0.79)である。また寛解期間が最低4年は続いた145例に限るとHRはさらに低くなり、高リスクCKDで0.45(95CI:0.25-0.82)、MACEで0.51(95CI:0.30-0.89)だった。
2型DM「寛解」例において心腎リスクが低下した理由としてGregg氏らは、「糖代謝改善」「減量に伴うその他代謝の改善や炎症抑制」に加え、「生活の変化がもたらす健康的な影響」の可能性も指摘している。同氏らによれば、生活習慣改善による2型DM「寛解」と臨床転帰の関係を検討した大規模研究は本論文が初めてとのことである。そして現在、Look AHEAD試験よりも良好な「生活習慣改善による2型DM寛解」を報告したRCT"DiRECT"でも、臨床転帰を観察中である。
Look AHEAD試験は米国国立衛生研究所ほか、米国公的機関から資金提供を受けて実施された。