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腎腫瘍[私の治療]

No.5206 (2024年02月03日発行) P.42

髙木敏男 (東京女子医科大学泌尿器科学教授)

登録日: 2024-02-03

最終更新日: 2024-01-30

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  • 腎腫瘍には散発性発生と遺伝性発生がある。散発性悪性腎腫瘍については10万人当たり5~8人の罹患率とされており(人種,地域により異なる)1),男性,喫煙者,高血圧患者に多い。遺伝性腎腫瘍については,Von Hippel-Lindau病,Bird-Hogg-Dube症候群,遺伝性平滑筋症などに併発する。本稿では,主に散発性悪性腎腫瘍(腎細胞癌)について概説する。

    ▶診断のポイント

    腎細胞癌の古典的な主徴として,血尿・疼痛・腹部腫瘤があるが,それらは進行性腎癌の症状であり,早期腎癌の多くは健診などでの腹部超音波や,他疾患精査中の画像検査で偶発的に発見されることが多い。画像診断における第一選択は造影CTであり,組織型によって所見が異なる。たとえば,腎細胞癌の約80%を占める淡明細胞型腎細胞癌では,造影早期相で濃染され,遅延相で洗い出し効果がある。腎機能障害ないし造影剤アレルギーを有する患者についてはMRIにて画像診断を行う。画像上,腎細胞癌を疑う場合は,他臓器転移のスクリーニング目的で胸部から骨盤部までのCTを行う。転移を有するか否かで治療方針が大きく異なる。診断目的の腫瘍生検は選択肢のひとつであるが,画像上明らかな腎細胞癌については実臨床において生検を行うことは稀である。ただし,転移を有する腎細胞癌において,薬剤選択目的での腫瘍生検を行うことがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【限局性腎細胞癌(転移を有さない腎細胞癌)】

    根治手術可能な症例は,手術にて腫瘍を除去する。cT1腎細胞癌については腎部分切除術を選択し,実臨床ではロボット支援腹腔鏡下に行うことが多い。cT1であっても,腫瘍の位置,腎機能,年齢などを考慮し,根治的腎摘除術を選択することがある。3cm以下の腫瘍であれば,focal therapy(焼灼・凍結治療)を行うこともある。cT2~cT3腎細胞癌については,根治的腎摘除術が一般的であるが,低腎機能,単腎症例では,腎部分切除術を行うことがある。

    【進行性腎細胞癌(転移を有する,あるいは根治手術不可能な腎細胞癌)】

    一般的には薬物治療が優先される。ただし,転移の状況,患者の全身状態によっては,原発部位を切除することがある(cytoreductive nephrectomy)。薬物治療については,International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium(IMDC)の再発リスクに応じて選択される薬剤が異なる。

    リスク因子は,①診断1年以内に転移を有する,②貧血,③血小板増多,④好中球増多,⑤補正カルシウム値高値,⑥Karnofsky performance status<80%,の6項目があり,0項目:favorable risk,1~2項目:intermediate risk,3項目以上:poor riskと分類されている。いずれのリスクにおいても,免疫チェックポイント阻害薬と分子標的治療薬の併用療法が中心的薬剤となっている。免疫チェックポイント阻害薬が使用できない,あるいは使用が躊躇される場合は,分子標的治療薬単剤治療を行うことがある。

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