欧米人のみならず東アジア人でも2型糖尿病(DM)例に対する心保護作用が証明されているメトホルミンだが[Hong J, et al. 2013]、この心保護作用は腎機能の高低に影響を受けない可能性が示された。腎保護作用も同様である。韓国・檀国大学のYongjin Yi氏らが診療データベース後ろ向き解析の結果として1月24日、Scientific Reports誌で報告した。
今回解析されたのは韓国在住で2型DMと新規に診断された3988例である。心筋梗塞(MI)・脳梗塞・末期腎不全の既往例は除外されている。3病院の診療データベースの2型DM 2万8441例からメトホルミン服用と非服用例を同数、各データベース内で傾向スコアを用いて背景因子をマッチさせ、抽出した。メトホルミン非服用例は全例、他経口血糖降下薬を服用している。平均年齢は60歳強、女性が4割強を占めた。レニン・アンジオテンシン系阻害薬とスタチンの服用率はいずれも40%弱のみだった。またメトホルミン以外の経口血糖降下薬としてはSU剤が最多だった。
これら3988例における180日間の「MACE(MI・脳梗塞)」と「MAKE(腎代替療法開始、または推算糸球体濾過率が持続的に15mL/分/1.73m2未満)」発生リスクを、メトホルミン「服用」群と「非服用」群間で比較した。
その結果、メトホルミン「服用」群では「非服用」群に比べMACE、MAKEともリスクは有意に低くなっていた。発生率比は順に0.76(95%信頼区間[CI]:0.64-0.92)、0.45(95%CI:0.33-0.62)である。またこの結果は、観察開始時のCKDステージ「3A」、「3B」、さらに「4」でも同様で、メトホルミン「服用」群では「非服用」群に比べMACE、MAKEとも発生率比は有意に低値だった(ただしステージごとの例数は不明)。
Yi氏らはランダム化比較試験による確認が必要としながらも、本データは腎機能低下例に対するメトホルミンの有用性を強く示唆するものだと評価している。
本研究は韓国腎臓学会、Seoul National University Bundang Hospital Research Fund、政府機関からの資金提供を受け実施された。