高齢透析女性に対する骨粗鬆症治療薬デノスマブは経口ビスホスホネート(BP)製剤に比べ、低カルシウム(Ca)血症リスクが約25倍まで増加する可能性が示された。米国前向きコホート解析の結果として1月19日、米国食品医薬品局(FDA)のSteven T. Bird氏らが米国医師会雑誌(JAMA)で報告した。
デノスマブはかねてより透析例における重篤低Ca血症リスクがFDAにより指摘されていた。FDAは今回の解析結果を受け、さらに「重度慢性腎疾患における重篤低Ca血症」をデノスマブの重篤有害事象(枠囲警告)として表記するよう指示を出した。
今回解析対象となったのは、米国高齢者公的保険下で維持透析を受け、デノスマブか経口BP製剤の使用を開始した65歳以上女性2804例である。
デノスマブ群と経口BP製剤群間で使用開始後12週間の低Ca血症出現率を比較した。12週間に限定したのは、デノスマブではその期間の低Ca血症増加が示唆されていたためである[Block GA, et al. 2012]。低Ca血症の定義は「アルブミン補正Ca濃度<7.5mg/dL」または「入院・救急外来における低Ca血症診断」とした。両群間リスクの比較にあたっては傾向スコアを用いた逆数重みづけ(IPTW)を実施し、背景因子を揃えた。
その結果、デノスマブ群における開始後12週間の低Ca血症発現率は39.9%だった。一方、経口BP製剤では1.8%である。デノスマブ群における発現増加は開始2週間後から著増し4週間後にピーク、その後は漸減して開始10週間後には経口BP製剤と同等まで低下した。デノスマブ群における低Ca血症ハザード比は、IPTWで背景因子補正後、26.6(95%信頼区間[CI]:15.8-44.9)の著明高値となった。「きわめて重篤」な低Ca血症に限定しても同様で、デノスマブ群の発現率は10.9%となり、IPTWで背景因子補正後の経口BP製剤群における0.4%に比べ10.5%、有意に高かった。なおデノスマブ群の重篤低Ca血症発現例では、10.7%が入院加療を要した(経口BP製剤群では皆無)。
本研究はFDAから資金提供を受けて実施された。