SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬(RA)、DPP-4阻害薬による心血管系(CV)イベント抑制作用をプラセボと比較したランダム化比較試験(RCT)の最新メタ解析が2月20日、Diabetes Obesity and Metabolism誌に掲載された。著者は英国・レスター大学のSetor K. Kunutsor氏ら。
SGLT2阻害薬とGLP-1-RAはCVイベントを抑制し、DPP-4阻害薬は抑制しないというのはこれまでと同様の知見だが、血糖降下療法によるCVイベント抑制作用が必ずしもHbA1c低下のみを介する訳ではない可能性も示された。
今回解析対象とされたのは、2型糖尿病(DM)例を対象にSGLT2阻害薬かGLP-1-RA、DPP-4阻害薬による大血管症/細小血管症抑制作用をプラセボと比較したRCT 20報である。登録例数は16万9513例、全例で標準的な2型DM治療が施行されていた。対象の平均年齢は60.3~69.0歳、2型DM罹患期間は7.2~15.8年だった。観察期間は1.3~5.4年間である。
・各血糖降下薬のMACE(CV死亡・心筋梗塞・脳卒中)と細小血管症に対する抑制作用をプラセボと比較(本稿では細小血管症を割愛)。
・血糖降下薬によるHbA1c低下幅とMACEリスクの関係を検討
・MACE抑制作用
SGLT2阻害薬群(5万7545例)とGLP-1-RA群(5万8168例)はプラセボ群に比べMACEリスクを有意に低下させた。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)はSGLT2阻害薬群が0.88(0.82-0.94)、GLP-1-RA群が0.85(0.79-0.92)だった。一方、DPP-4阻害薬群(4万7724例)は1.00(0.94-1.06)でプラセボ群と有意差を認めなかった。
・HbA1c低下幅とMACEリスク
SGLT2阻害薬とGLP-1-RA、DPP-4阻害薬の各群を併合して解析した結果、MACEリスクは対プラセボ群でHbA1c低下幅が大きいほうが減少する傾向を認めたものの、有意な相関とはならなかった。ちなみにHbA1c「1%」低下に伴うMACEのHRは0.84(95%CI:0.67-1.06)である。この結果は「CV死亡」「心筋梗塞」「脳卒中」を別々に解析しても同様で、いずれのリスクもHbA1c低下幅と有意な相関はなかった。
Kunutsor氏らはこの結果を、有意とはならなかったもののHbA1c低下に伴うMACEリスク低減傾向が認められたと読み、「CVリスク軽減において血糖管理は重要」だと考察。とは言え、HbA1c低下そのものはMACE抑制と相関していなかったため、MACEリスクを抑制したSGLT2阻害薬とGLP-1-RAでは血糖低下以外の作用がCV保護に寄与している可能性もあるとしている。
本研究はServier Affaires Medicalesから資金提供を受けた。