「外傷初期診療ガイドライン」1)に基づき全身観察を行う。四肢以外の外傷の有無に注意を払い,初期評価では四肢外傷が「life threatening injury」や「limb threatening injury」でないか注意する。
受傷に先行する意識障害,麻痺など内因性要素がなかったかを確認する。内因性の場合,外傷対応中に内因性の急変を起こす可能性がある。
どの程度の外力がどのように損傷四肢に加わったか,外傷を成したと考えられる物体の損傷度や現場状況も参考にする。目撃者や救急隊からも聴取するとよい。重量物による圧挫(挫滅)や長時間の圧迫などは鈍的血管損傷,コンパートメント症候群,クラッシュ症候群が疑われるため注意する。
四肢単独外傷に見えても,高エネルギー外傷では他部位に外傷が隠れていることがある。気道,呼吸状態,血圧,心拍数,不整脈の有無,四肢末梢の冷感湿潤,意識状態,体温を観察し,生理学的異常を見落とさない。四肢単独外傷でも出血性ショック,life threatening injuryになりうる。頭部から足先,背部まで系統解剖学的に創や腫脹,圧痛の有無を確認した後で四肢を診察する。
四肢は,腫脹,変形,創の場所,大きさ,動脈性出血の状況,創汚染の状態を確認する。創は可能な限り写真に記録する。外傷部位の骨折変形や関節脱臼がないか触診し,①pulse(四肢末梢の血流状態,色調,拍動の強さ),②motor(自動運動が可能か),③sensory(受傷部遠位における感覚の有無)の3項目と,自動・他動運動での疼痛を,健側と比較し確認する。
血管損傷を伴う四肢外傷はlimb threatening injuryとなりうる。hard sign〔動脈拍動の減弱消失,大量出血,血腫増大や拍動性血腫,thrillや血管雑音,虚血症状の5P(疼痛,蒼白,冷感,知覚異常,運動麻痺)〕とsoft sign(現場での一時的血腫,血管近傍の損傷・血腫・神経損傷,説明のつかない低血圧)をみる。hard signが1つでも陽性であると,確率90%以上で血管損傷があるとされる。
神経と血管は解剖学的に並走することが多いため,神経損傷にも留意する。
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