【感染既往のある高齢者でもワクチン接種は推奨され,副反応も高度ではない】
(1)東京大学医科学研究所のグループからの報告では,COVID-19により誘導された抗体は,発症20日目をピークとして緩徐に減少し,発症後3~6カ月は維持されることを明らかにしています。その一方で,弱い抗体応答しか認められない症例もあり,再感染のリスクのあるグル-プは存在します1)。
今までの研究により,自然に感染するよりも,ワクチン接種を行ったほうが,血中抗体が高くなることも知られています2)。また,COVID-19から回復した集団において,少なくとも1回のワクチンを接種した場合,ワクチンを接種しなかった場合に比して,再感染率を大きく減少させ,ワクチン効果は82%であったと報告されています3)。
米国疾病対策センター(CDC)は,変異株が流行している現況では,感染後のワクチン接種がその後の感染防御をさらに高めるとして,感染からの期間にかかわらずワクチン接種を勧めています4)。
以上を鑑みて,COVID-19感染による重症化リスクのある高齢者には,感染既往を有していても,前回接種から所定の期間が経過した場合はワクチンの追加接種を検討することが望ましいと思われます。
(2)なお,COVID-19感染の既往がある人とない人でのワクチン接種後の副反応の比較では,接種部位局所の副反応の頻度は,感染既往の有無で違いはありませんでした。他方,倦怠感,頭痛,寒気,発熱等の全身症状の頻度は,感染既往のある人が高い傾向がありましたが,いずれも軽症で入院を要する例はなかったとしています2)。
【文献】
1)Yamayoshi S, et al:E Clinical Medicine. 2021;32: 100734.
2)Krammer F, et al:N Engl J Med. 2021;384(14): 1372-4.
3)Hammerman A, et al:N Engl J Med. 2022;382 (13):1221-9.
4)Centers of Disease Control and Prevention:CDC Science Brief. October 6, 2023.
【回答者】
石田 直 倉敷中央病院呼吸器内科主任部長/副院長