日本にはセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(sexual and reproductive health and rights:SRHR)に関わる問題点が複数存在する。
これらは,子どもが成長・発達して社会に出ていく上で,とても大きな壁になることが少なくない。
SRHRは日本語で「性と生殖に関する健康と権利」などと訳される。国際連合における人権活動の中心となる機関である国連人権高等弁務官事務所(Office of the High Commissioner for Human Rights:OHCHR)の説明を参考にすれば,SRHRは「達成できうる最高水準の身体的および精神的な健康を享受する権利であり,すべての人に不可欠な要素」と言い換えることができる1)。
4つの要素に分解すると,表1のようになるだろう。それぞれの要素は当然ながら,部分的に重なっている。
これらに共通する潜在的かつ非常に大きな課題として,「包括的性教育」が社会に浸透していないことが挙げられる。包括的性教育は,国際的に広く認知・推進されている「性に関する知識やスキルだけでなく,人権やジェンダー観,多様性,幸福を学ぶ」ための重要な概念,かつ手段と言える。国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)が中心となって作成された「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education)」2)が,国際的な標準指針として頻用されている(図1)。この指針を念頭に置き,包括的性教育を日本社会に浸透させていくことは,性別問わず子どもたちのSRHRを向上し,ひいてはこれからの日本の未来を明るいものにするために不可欠だと考えられる。