米国フラミンガム研究が1990年代に報告したように、心房細動(AF)例の10年生存率は男女とも非AF例に比べて半分以下である[Benjamin EJ, et al. 1998] 。では治療が進歩した現在、AF例の生存は改善されたのだろうか。少なくとも「心不全(HF)関連死」に関しては「否」のようだ。経時的な著増が続いている。フェラーラ大学(イタリア)のMarco Zuin氏らが4月30日、米国データ解析の結果としてJournal of the American Heart Association誌で報告した。
解析対象となったのは米国在住で、1999年から2020年の間にHF関連死を来した、15歳以上のAF 91万6685例である。公的悉皆的死亡記録である”CDC’s WONDER”から抽出した。
これらHF関連死亡91万6685例を対象に(1)死亡数、(2)年齢調整死亡率―の年次推移を検討した。またどのような基礎疾患が多いかも調べた。
・HF関連死亡数
HF関連死は経時的に著増していた。すなわち99年には2万2075例/年だったHF死亡例数が、2020年には4倍近い8万5311例まで増えていた。
なお観察期間を平均したHF関連死亡数は、加齢に伴い指数関数的に増加していた(特に45歳超)。
・HF関連死亡・年齢調整発生率
年齢調整後のHF関連死亡率も同様に著増していた。すなわち99年には8.15/10万人だったが、20年には20.48/10万人まで増加していた。
さらに99年から11年までの年間増加率が平均2.1%でほぼ直線的に推移していたのに対し、11年以降は年間6.8%に急増していた(Zuin氏らはこれをガイドライン改訂に伴うAF検出増加の反映と考察)。
・基礎疾患
HF関連死亡例の基礎疾患として多かったのは、虚血性心疾患(IHD)と高血圧性心疾患、心筋症、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の5種類だった。ただしIHDと脳卒中が占める割合は経時的に減少し、逆に高血圧性心疾患の割合が増えていた。
Zuin氏らはHF関連死亡増加の理由として、AFそのものに伴うHF例死亡リスク増 [Mundisugih J et al. 2023] に加え、AF/HFリスクを上げるリスク因子保有率の経時的増加が、死亡リスク増大に反映されている可能性も指摘している。AF管理だけでなく、そのほかのCVリスク因子管理/減少も大切だというスタンスである。
本研究は外部からの資金を受けていないとのことだ。