SUMMARY
日本のプライマリ・ケアは制度化の挫折と教育および学術面での発展が特徴だったが,高齢化,人口減少などにより,社会が求める医療のあり方は変化している。改めて若手総合診療専門医とベテラン医師の連携による近未来のモデル形成が必要である。
KEYWORD
かかりつけ医機能
1980年代より提唱されたかかりつけ医という概念は,2013年に日医・四病協で定義づけされ,医療機能情報提供制度にて,「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う医療機関の機能」と規定された。この秋からより具体的な検討に入っており,議論の行方が注目される。
PROFILE
1999年京都大学医学部卒。日鋼記念病院で研修後,北海道家庭医療学センターに勤務。2008年より北海道家庭医療学センター理事長,本輪西ファミリークリニック院長。2019年日本プライマリ・ケア連合学会理事長に就任。日本フォーミュラリ学会理事。家庭医療専門医。
POLICY・座右の銘
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず
未来を語るために,過去の歩みをまず振り返りたい。日本プライマリ・ケア連合学会の源流のひとつである「実地医家のための会」は,1963年に創設された。創設者の1人である永井友二郎氏は「実地医家は人間を部分としてでなく全体として,生物としてでなく社会生活をいとなむ人間としてみてゆかなければならない」と指摘した。そして「大学の先生が教えてくれるのを待っているのでなく,自分達の問題は自分達で解決してゆこう,そのために発表の場,研鑽の場が必要である」とプライマリ・ケアの再生の必要性と,独立した学術分野として確立する必要性を唱えた1)。
それから15年後の1978年に日本プライマリ・ケア学会が設立され,プライマリ・ケア領域では日本で初の学術団体が誕生した。国も家庭医制度への関心と期待を高め,「家庭医に関する懇談会」を1985年に設置し,日本の医療に家庭医制度を導入するための議論を開始した。しかし,日本医師会の強い反対もあって,1987年の報告書で10項目の家庭医の果たすべき機能を列挙するにとどまり,制度化の道はいったん閉ざされた2)。