近年、慢性心不全(HF)領域では治療の「進歩」が著しい。しかし治療の主役であるHF患者の感じる課題は解決されているのだろうか。対象は少数ながら詳細なインタビュー調査の結果が6月10日、ESC Heart Failure誌に掲載された。著者はルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)のAlice Vanneste氏ら。患者は「生存」や「入院」よりも「今の生活」の改善を重視しているようだ。
調査対象となったのは、ベルギー在住でオランダ語を話すHF患者14名である。ベルギー大学病院循環器科からの調査呼びかけに応じた。平均年齢は72歳(58~79歳)、5名が女性だった。HF診断からの年数は平均8年(0~26年)、診断時年齢の平均は64歳(52~69歳)だった。
これら14名を対象に、HF治療において課題と感じている医学的問題(unmet medical needs)を、個別に面談して調査した(面談者はすべて同一)。
質問ではまず、疾患・治療に関して患者が「要改善」と感じている3項目を自由に挙げてもらった。次は事前に用意されたリストから、「要改善」事項を5項目選択してもらった。リストに並ぶ項目は過去の研究で「患者が重視している」と報告している事項から選ばれた。なお患者のHFに関する知識を均等化するため、質問セッションを始める前に、HFについての基礎知識を説明した。
・患者重視1位(と3位)
その結果、HF患者が最も「要改善」と感じていたのは「息切れと疲れ」だった(事前用意リストからの選択でも同様)。QOLに大きな影響を与えるためだという。なおQOLに関しては「頻回のトイレが煩雑」と感じ、利尿薬を減量/中止する患者も散見された。また、水分制限を面倒と感じている患者も一定数いた。そのためだろうか、「低下した腎機能」を課題とし挙げた患者は、次項の「自立」に次いで多かった(第3位)
・2位
「息切れと疲れ」に次いで患者が「課題」と感じていたのが「自立」である(事前用意リストからの選択でも同様)。背景にあるのは「周囲の迷惑になりたくない」という気持ちだった。
・4位以下
「生存」は患者にとって上記3項目に次ぐ4位の「課題」だった。「入院」は5位(ただしVanneste氏らは、この順位の解釈には注意が必要だとしている)。そして6番目に「要改善」と患者が感じていたのが、「(患者と)医師とのコミュニケーション」だった。循環器専門医と家庭医間のコミュニケーション不足を指摘する患者もいた。
Vanneste氏らはこの研究で終わらず、HF患者が求めるニーズや治療効果について、さらなる定性的研究を実施する必要があると考えている。
本研究は外部からの資金提供を受けていないという。