呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)は,未熟肺でのサーファクタント不足により気相と液相の界面である肺胞表面の表面張力が上昇し,肺胞を縮める力が増強することで容易に肺胞虚脱を引き起こし,呼吸不全となる。
新生児の呼吸障害は原因が多岐にわたるため,1つの症状や検査でRDSを診断するのは困難であり,他疾患を除外しつつ総合的に判断する。
チアノーゼ,多呼吸,陥没呼吸や呻吟などの呼吸障害を認める。特に呻吟は,肺胞虚脱を防ぐために患児が自力で呼気終末陽圧(positive end-expiratory pressure:PEEP)をかけることで認められる。
胸部X線写真では,含気のある肺胞と虚脱した肺胞が混在するため網状顆粒状陰影(reticulogranular pattern)を呈し,虚脱した肺胞を背景に気管支陰影が明瞭化する気管支透亮像(air bronchogram)を認める。羊水や出生直後の患児の胃液を用いたマイクロバブルテストを行うことでRDSの発症リスクを予測することができる。
RDSは肺でのサーファクタント不足が原因であり,根本的な対応はサーファクタントの補充である。不足の程度が軽い場合は呼吸補助を行っている間に内因性のサーファクタント分泌により症状が改善することもあるが,多くの場合は時間経過により進行性に症状が増悪するため注意が必要である。
対症療法として,肺胞虚脱による呼吸障害に対する呼吸補助を行う。高い設定での人工換気によって肺損傷が起こり慢性肺疾患のリスクが高まるとされているため,人工換気を要するほどの呼吸障害を認める場合は,適切な時期でのサーファクタントの補充により酸素の使用量を減らし,換気設定を緩和する必要がある。最近は人工換気による肺損傷を軽減するため,気管内挿管の上でサーファクタントを補充した後に抜管し,持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)へ切り替える方法(intubation-surfactant-extubation:INSURE)により慢性肺疾患の発症頻度低下が報告され,国内でも普及しつつある。
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