2型糖尿病(DM)例に対する腎保護作用は確立された感のあるSGLT2阻害薬だが [Zelniker TA, et al. 2019] 、服用開始後における体重減少の有無と程度により、腎保護作用は異なる可能性が示された。わが国実臨床データ解析の結果として東京大学の神馬崇宏氏らが7月28日、Diabetes, Obesity and Metabolism誌で報告した。
今回の解析対象は、わが国でSGLT2阻害薬開始から1年以上経過し、かつ推算糸球体濾過率(eGFR)の推移が明らかだったDM患者1万1569例である。健診データと診療報酬を収集した民間データベースから該当する全例を抽出した。年齢中央値は52歳、85%が男性だった。HbA1c中央値は7.4 %、空腹時血糖の中央値は144 mg/dLである。血圧中央値は129/82 mmHg。
eGFR中央値は 77.7 mL/分/1.73m2、73.1%は蛋白尿陰性だった。また13.9%がすでにDM性腎症と診断されていた。レニン・アンジオテンシン系阻害薬服用率は39.2%、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は2.3%、GLP-1受容体作動薬は1.9%だった。
これら1万1569例を、SGLT2阻害薬開始後1年間のBMI変化三分位数で3群に分け、eGFRの変化を比較した。eGFRスロープは混合効果モデルを用いて算出した。
・BMIの変化
BMI減少幅「最大」三分位群 (>4.55%)における減少幅中央値は「6.8 %」、「第2」群(4.55~1.43%)で「3.0 %」、「最小」群(<1.43%)は「-0.7 %」(増加)だった。
・eGFRの変化
1.7年間の観察期間中、SGTL2阻害薬開始後の「BMI減少幅が大きい」ほど、「eGFR低下幅は小さく」なるという有意な傾向を認めた(傾向P<0.001)。具体的なeGFR低下幅は、BMI減少幅「最大」三分位群が「0.78mL/分/1.73m2」、「第2」群で「0.95mL/分/1.73m2」、「最小」群が「1.65mL/分/1.73m2」だった(「最小」群の下げ幅は他2群に比べて有意に大)。
上記傾向は「性別」「年齢(50歳の上下)」「蛋白尿の有無」「BMI高低(25の上下)」を問わず認められた。また複数の感度分析でも、上記傾向は確認された。
神馬氏らは、今回認められたeGFR低下の群間差は臨床上意味を持つとした上で [Inker LA, et al. 2019] 、SGLT2阻害薬開始後の体重変動が、腎予後評価に資するのではないかと考察している。
本研究は厚生労働省と文部科学省からグラントを受けた。