わが国における心不全(HF)入院例の実態については、JROADHFやCHART-2から報告されているが、このたび、民間救急病院ネットワークのデータが9月3日、ESC Heart Failure誌に掲載された。類型として最も多かったのはHFpEFである。著者は日本ベーリンガーインゲルハイムの小野康久氏ら。
今回解析対象とされたのは、日本17施設から登録されたHF入院7212例である。登録期間は2017~20年。EF不明例などは除外されている。これら17施設はいずれも急性期民間病院であり、NPO法人「VHJ機構」に参画している。
これら7212例の背景因子や院内治療を横断的に比較し、加えて探索的ではあるが退院後の転帰も比較した。
・背景因子
HF類型として最多はHFpEFの44%(3183例)、次いでHFrEFが38%(2749例)、HFmrEFは18%(1280例)だった。EF平均値はHFpEF群:62.6%、HFrEF群:28.3%、HFmrEF群:44.3%である。またBNP平均値はHFpEF群:639.0pg/mL、HFrEF群:1274.7pg/mL、HFmrEF群:1021.4pg/mLだった。
合併疾患最多は高血圧で、HFpEFの45%、HFmrEFの41%、HFrEFでは37%に認めた。次いで多かったのが糖尿病となり、3類型とも合併率は約30%前後だった。なお冠動脈疾患(含・心筋梗塞既往)合併率は、HF類型を問わずおよそ35%だった。
・治療
入院後のβ遮断薬処方率はHFrEFが81%、HFmrEFが72%、HFpEFは59%だった。ACE阻害薬/ARBはHFrEFで63%、HFmrEFが59%、HFpEFは53%である。また全体の87%が心リハを受けていた。
・院内転帰
入院中のHF増悪が最多だったのはHFmrEF(41%)、次いでHFrEF(39%)、HFpEF(33%)だった。また全体で5.7%が院内死亡の転帰をとったが、HF死亡(3.0%)の頻度はHF類型間で有意な差はなかった。
・退院後転帰
退院後平均324日の間に、約21%が再入院した。HFpEF、HFrEF、HFmrEF間に入院率の差はなかった。また同期間に8.7%(625例)が死亡した。類型別のHF死亡率はHFrEFが最も高く5.5%、次いでHFpEFの4.7%、HFmrEFの4.6%だった(ただし群間に有意差なし)。
本研究は日本ベーリンガーインゲルハイムから資金提供を受けた。筆頭著者を含む2名は同社社員だった。さらにメビックス株式会社社員も1名、著者に名を連ねた。