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濾胞性リンパ腫[私の治療]

No.5242 (2024年10月12日発行) P.39

錦織桃子 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授)

登録日: 2024-10-10

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  • 濾胞性リンパ腫は低悪性度リンパ腫の中で最多の病型である。一般に緩徐な臨床経過をたどり,一時的に自然退縮がみられることもある一方で,進行の早い病態に形質転換を生じる症例も存在し,臨床経過は多様である。従来の化学療法では,一時的な寛解が得られても治癒することはなく,再発を繰り返す。しかし,殺細胞性抗癌剤に加え,抗体製剤,低分子化合物,CAR-T細胞療法など治療の選択肢は増加しており,近年の報告では濾胞性リンパ腫の10年生存割合は,80%まで改善していることが示されている。本疾患が生命予後には直接影響しない症例も増えつつあると考えられる。

    ▶診断のポイント

    典型的には全身リンパ節腫脹や脾腫,骨髄浸潤による血球減少などが認められるが,節外性病変を呈する場合もある。また,十二指腸に限局して認められる特異的亜型があり,上部内視鏡検査で偶発的に見つかることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    低腫瘍量の濾胞性リンパ腫では,早期介入の予後的意義は乏しく経過観察が勧められ,腫瘍径の増大や身体症状の出現に基づき治療の開始を検討する。

    高腫瘍量の症例に対しては抗CD20抗体〔リツキサン(リツキシマブ)もしくはガザイバ(オビヌツズマブ)〕と,化学療法〔トレアキシン(ベンダムスチン塩酸塩水和物),CHOP,CVPのいずれか〕の併用療法を行う。ガザイバ群のほうがリツキサン群よりもprogression-free survivalは優れるが,overall survivalは両群で差を認めないという結果が示されている1)。一方,ガザイバとトレアキシンの併用群では,感染症などの有害事象が多いことに注意を要し,リンパ腫の病状と感染症のリスクとの兼ね合いからレジメンを選択することが勧められる。

    多くの症例は治療に良く反応するものの,腫瘍細胞は体内に残り,再発を繰り返す。再発時は抗CD20抗体を含む化学療法のほか,リツキサン単剤やレブラミド(レナリドミド水和物)との併用療法などが行われる。

    濾胞性リンパ腫症例の約2割にEZH2遺伝子の機能獲得型変異が認められ,標準的な治療が困難な(2ライン以上の前治療歴のある)再発・難治性症例で,コンパニオン診断によりリンパ腫細胞のEZH2変異が陽性であれば,EZH2阻害薬〔タズベリク(タゼメトスタット臭化水素酸塩)〕も治療の選択肢となる。早期再発を繰り返す症例や,濾胞性リンパ腫グレード3B,大細胞型B細胞リンパ腫への形質転換での再発・難治性症例では,CAR-T細胞療法も選択肢となる。

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