鼻出血の約70~80%はKiesselbach部位(鼻中隔軟骨部前下方)からの出血である。
正しい圧迫指示により,患者自身で止血することも可能である。止血が完了するまでは重症化の可能性があることを念頭に置く。
問診前:出血が続いている場合は,興奮状態にあることが多いため,まず患者を落ち着かせ,坐位で下を向き,患者自身の拇指・示指で両側鼻翼をつまんで,鼻中隔前方を圧迫させながら問診を開始する。下を向くことで,血液が鼻から口腔へ回りにくくなる。
問診:外傷,異物,腫瘍などの局所的要因,抗血小板薬・抗凝固薬内服などの全身的要因の有無,出血時間・出血量について聴取する。
バイタルサインは圧迫姿勢のまま確認する。このとき血圧は高いことが多い。
大量出血を疑う場合は,貧血チェック,血管確保,血液検査,経時的血圧測定を行う。低容量性ショック(「ショック」の稿参照)のサインを見逃さない。止血が完了するまでは重症化の可能性があることを念頭に置く。血液を飲み込んでいるため,嘔吐する可能性も考えておく。
手指による圧迫止血を10分以上行う。
圧迫のみで止血が困難な場合,鼻内に3000倍ボスミンⓇ(アドレナリン)液を含ませた綿球または2cm×10 cm程度のガーゼを挿入後,再度圧迫する。少量の出血が持続する場合は,止血するまで軟膏付きガーゼを挿入する。
なおも止血困難な場合は,いったんガーゼを抜去し,バルーンタンポンを使用する。患側鼻腔から尿道用バルーンカテーテルを挿入し,上咽頭腔でバルーンを膨らませる。バルーンを前方に引いて,後方への血液の垂れ込みを防止した後に,鼻内に軟膏付きガーゼを止血するまで挿入し,最後にバルーンを鼻孔の位置からずれないようにテープで固定する。
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