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網膜上膜[私の治療]

No.5251 (2024年12月14日発行) P.45

森田哲郎 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学講座)

的場 亮 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学講座)

森實祐基 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学講座教授)

登録日: 2024-12-16

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  • 網膜の中心である黄斑上に,薄い病的な膜が形成される疾患である。この膜は硝子体細胞や網膜グリア細胞,網膜色素上皮細胞などのほか,これらが形質転換した筋線維芽細胞などにより構成される。網膜上膜(epiretinal membrane:ERM)が網膜を物理的に牽引し,網膜の構造を障害することで,視力低下や歪視,不等像視(大視症)などの視機能障害をきたす。
    40歳以上の約10%に発症すると報告されており,加齢が危険因子である。加齢以外に原因を認めない特発性ERMが最も多い。一方で,糖尿病網膜症や網膜循環障害,眼内炎症,網膜裂孔,網膜剝離,外傷などを原因として発症する場合もある(続発性ERM)。

    ▶診断のポイント

    • 初期には無症状であるが,進行すると上記の視機能障害をきたす。
    • 自覚症状と眼底所見から診断する。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)を用いることで軽微な初期病変の検出や,より詳細な病態評価が可能になるため,きわめて有用である。
    • 視機能としては視力だけでなく,ERMによる特徴的な歪視や不等像視を評価することが重要である。歪視はアムスラーチャートやM-CHARTSTM,不等像視はNew Aniseikonia Testを用いて評価する。
    • 続発性ERMの原因となる疾患も念頭に置いて,問診および診察することが重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    有効な薬物治療はない。ERMを外科的に剝離除去し,網膜にかかる牽引を解除することが唯一の治療法である。

    明確な手術適応基準が存在しないため,視機能障害の程度に応じて手術適応を判断する。筆者らは,矯正視力1.0未満,M-CHARTSTM値0.5以上を目安に手術を検討している。

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