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事故調の運用指針を取りまとめ - 医療安全向上を目指し、10月スタートへ [医療事故調査制度] 

No.4744 (2015年03月28日発行) P.5

登録日: 2015-03-28

最終更新日: 2016-11-21

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【概要】今年10月に始まる医療事故調査制度の運用指針を審議する厚労省検討会が20日、報告書をまとめた。物別れに終わった先月の最終会合の後、意見調整が進められていた。

昨年成立した改正医療法では、医療事故の再発防止と医療安全の確保を目的に、医療事故が発生した医療機関は院内調査を行い、調査結果を第三者機関に報告し、遺族に説明することが義務づけられた。また、調査対象となる医療事故が発生した医療機関やその遺族は第三者機関に調査を依頼することもできる(6頁図)。制度の運用指針(厚労省令・通知)を審議した厚労省検討会での主な論点を概説する。

●調査報告書の提出は努力義務に
医療法では調査対象を「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産で、施設の管理者が予期しなかったもの」と規定している。検討会では、「予期しなかった死亡・死産」の定義が大きな論点だったが、表1の通り合意した。事前に死亡リスクを患者に伝える際には、死亡率など一般的な可能性の説明ではなく、患者個人の臨床経過を踏まえた説明や記録であることに留意するよう通知で規定される。なお、③は救急医療などが想定されている。
医療機関が行う調査の方法については、表2の項目から、医療機関の管理者が選択して調査。ここで議論となったのが、院内の調査報告書に再発防止策を記載すべきか否かだ。「制度の目的が再発防止なのだから記載すべき」との意見に対し、「正しい再発防止を記載するノウハウが蓄積されていない現状では刑事事件を誘発する可能性がある」など記載に否定的な意見が出ていた。最終的には、通知に「再発防止は可能な限り調査の中で検討することが望ましいが、必ずしも再発防止策が得られるとは限らないことに留意する」との文言を記載することで合意した。
最大の論点となった調査結果の遺族への説明方法は、「遺族が希望する方法で説明するよう努める」という文言で決着した(表3)。検討会では、調査報告書の遺族への提出義務化を求める意見と、調査報告書が個人の責任追及のきっかけとなり、その影響で医療安全に資する情報が集まらなくなる懸念から、提出義務化に反対する意見が対立していたが、調査報告書の提出は医療機関の努力義務となった。
厚労省は23日から来月21日まで、省令のパブリックコメントを募集し、パブコメ終了後に関係省令と通知を発出する。また制度開始までに、全国に1機関設置する第三者機関や、医療機関の調査を支援する全国の「支援団体」の指定も進める。

●山本座長「医療界を信頼して制度を構築」
報告書取りまとめを受け、20日に関係者が相次いで会見した。検討会の山本和彦座長(一橋大法学教授)は、「医療界の自発的取り組みに信頼を置いて、制度を作った。医療界もそのように動いていただけると思っている」と医療界の対応に期待を示した。
日本医師会の横倉義武会長は、「真に医療の安全と質の向上に資する制度として機能させるよう協力する」と強調。日本医学会の高久史麿会長も全面協力する考えを示した。また、同制度では院内調査の費用は医療機関の負担になることから、日医の今村定臣常任理事は「会員に負担がかからないような保険制度の創設を検討中」との方針を明らかにした。
日本医療法人協会の小田原良治常務理事は「日本の医療安全の仕組みがWHOドラフトガイドラインに準拠することで、国際的水準に沿うものとなることを喜ばしく思う」との見解を発表。調査報告書に関しては、「刑事裁判で使われることになれば、制度が壊れかねない」との懸念を示した。
厚労省の橋本岳政務官は、「医療安全を向上させるという制度の目的に立ち、医療界の皆さんに真摯に取り組んでいただき、未然に事故が防げるようになることを期待している」と強調した。
【 詳細は小社ホームページに掲載 http://www.jmedj.co.jp/c/jikochou 】

【記者の眼】6回開催された検討会では、毎回激しく議論が戦わされ、難産の末、報告書がまとまった。医療安全向上という制度の目的を実現するために医療機関にかかる期待は大きい。期待に応えるための体制整備が急務だ。(N)

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