分娩施設の医師や助産師による一般社団法人「日本産婦人科協会」が設立され、18日に都内で設立総会が開催された。産科の労働環境や報酬制度の改善を目指すとしている。大川豊会長(大川産婦人科医院院長)は、産科の訴訟リスクが萎縮医療につながることを懸念し、「分娩に携わる医師や助産師を守り、能力を発揮してもらうことで、結果として妊産婦の役に立ちたい」と述べ、活動に意欲を示した。
総会では、産科医療補償制度の問題点について事務局長の池下久弥氏が講演。池下氏は、同制度が(1)原因分析報告書に対する分娩機関の不服申し立てが想定されていない、(2)報告書がインターネットで公開される─など、医師の人権を無視していると指摘。ある重度脳性麻痺児の補償金を巡る訴訟では、民間保険会社が「分娩機関の過失の有無の判断のためにも診療録や検査データの写しは必要」と答弁したことを紹介し、「この制度は責任追及が目的ではないのに、“過失の判断”をするのは制度の目的と矛盾する」と問題視した。
10月から始まる医療事故調査制度に関しては、事前に死亡リスクを伝えれば制度の対象から外れることについて、「自分の身を守るためにはリスクを伝える必要があるが、妊産婦にストレスを与えたくない」など会員から戸惑いの声が上がった。