Clark母斑を除くと最大径7mmを超えるものは稀である。組織学的には表皮下層に発生し,徐々に真皮内に浸潤し,その後,表皮内病変が消失する。中年までは数が増えていくが,その後減少する(色を失って存在がわからなくなる)。半球状に隆起し,表面が平坦なMiescher型母斑と,有茎性で表面が乳頭状を呈するUnna型母斑がある。前者は体幹に,後者は頭頸部に好発する。
Clark母斑は中央が濃く周囲が薄い色の斑,あるいはわずかに隆起し,体幹・四肢に好発し,10mmを超えることがある。組織学的には表皮内と病巣の中央部の真皮浅層に限局して母斑細胞が存在する。Spitz母斑は若年者に発症する紅色~黒色の病変で,組織学的には細胞異形が認められ,メラノーマとの鑑別が難しい場合がある。臨床的に黒色を呈し,組織学的に紡錘形細胞からなるものをReed母斑と呼ぶが,Spitz母斑の亜型とされる。Halo母斑は周囲に白斑を伴うもので,メラノサイトに対する自己免疫現象であり,メラノーマにも認められることがある。組織学的に真皮内に稠密な炎症性細胞浸潤を伴うため,メラノーマとの鑑別が重要である。
爪の色素細胞母斑は線状を呈する。基部と先端における太さの差と色の差を観察する。先端に向けて先細りであれば爪母の病変が急速に増大していることがわかる。色に変化があればやはり爪母の病変の色の分布が短期間に変化していることが示唆される。
青色母斑は真皮内にメラニン顆粒を含有するメラノサイトが増えている病変であり,メラニンが真皮の中下層にあるため青色を呈する。青色母斑も生下時から存在する場合と後天的に発生してくる(顕在化?)場合がある。
偏光下で拡大して観察するダーモスコピーは診断に必須の検査である。足底の良性の母斑の基本パターンは,皮溝に平行(parallel furrow pattern),格子状(lattice-like pattern), 線維状(fibrillar pattern)の3パターンである。良性の3つのパターンには部位特異性があり,荷重部位は線維状,非荷重部位は格子状,両者の境界では平行を示すことが多い。足底と足背の境界部(趾の間)や荷重部と非荷重部の境界部では上記のパターンが複数混在する。また,足底と足背の境界部の母斑は,ダーモスコピーのパターンも病理組織学的所見も,メラノーマとの鑑別が難しい組織像を示すことがある。掌蹠以外の部位では,規則的な網目状から点状の集合体として認められ,基本的には均一で対称性である。
Spitz母斑は病巣辺縁に棘状に突起(streaks)を伴うパターンが特徴的だが,このようなパターンを示さないこともある。Clark母斑は均一で整った網目状を呈する。青色母斑はパターンのない均一な青色斑として観察される。爪の色素細胞母斑は褐色~黒色の幅が一定の線として認められる。
後天性の色素細胞母斑とメラノーマの鑑別に必要なポイントは,①初めて気づいた年齢,②現在のサイズ,③ダーモスコピー所見,である。3mm以下の小型の病変はダーモスコピー所見も未成熟なことが多いため,必要以上に悩まずに,サイズが大きくなるようなことがあれば受診するように伝えて,いったん終診としてもよい。
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