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薬物乱用がないことの診断書発行について

No.5230 (2024年07月20日発行) P.47

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長)

登録日: 2024-07-17

最終更新日: 2024-07-16

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国家資格登録申請時の診断書に,大麻などの薬物乱用がないことの診断項目があります。主治医として定期的な診療関係にある,かかりつけ医として何度も診療を行ったことがある,あるいは学校の教官等として日頃から学業や生活などの様子を観察し評価してきた経緯がある等の相当な事情があれば,特段の検査を行うことなく診断することも可能かもしれないとは思います。しかし,まったくの初診で診断を求められた場合,問診と身体所見のみで薬物乱用はないと診断することには無理があると思います。
そのような場合には,薬物を検出する簡易的な検査を行うべきでしょうか。検査を行うことができない場合はどうすればよいでしょうか。検査を行うことができる施設,あるいは通院中の主治医,かかりつけ医など診断可能なところに行くよう指示すべきでしょうか。検査を行わずに薬物乱用なしと診断した後に違法薬物の取締法などを根拠に検挙されることなどがあった場合,診断書の虚偽記載など法的な責任を問われる可能性はないでしょうか。(静岡県 K)


【回答】

【必ずしも検査は必要なく,原則として診断した医師に法的責任はない】

各種法令で,診断書が必要とされる趣旨を考慮すると,可能であれば検査を実施するのが理想でしょう。

しかし,当該検査を行うことができる医療機関がどの程度あるか(検査を行うことによる申請手続等の遅滞),実際に薬物乱用のケースがどの程度あるか,問診や身体所見でも明らかな薬物乱用については判断可能,という点も考慮すると,必ずしも検査が必須であるとまでは言えないと考えます。

もちろん,通院中の主治医やかかりつけ医による診断のほうが,より望ましいと考えられます。

なお,検査を行わずに薬物乱用なしと診断した後に,当該患者が薬物乱用等の罪で有罪となった場合でも,原則として診断書を作成した医師には「故意」は認められず,虚偽診断書作成罪が成立することはないと考えます。このような場合,民事的な責任(賠償責任)を負うこともないと思われます。例外的に,明らかに薬物乱用が疑われる状況であるにもかかわらず,あえて診断書を作成したという特殊な場合は,虚偽診断書作成罪や民事上の賠償責任が生じうる可能性があるでしょう。

【回答者】

川﨑 翔 よつば総合法律事務所東京事務所所長

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