(概要) 厚生労働省の「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」は5日、特定機能病院のガバナンス改善策をとりまとめた。同省は承認要件の見直しの検討に入る。
タスクフォース(TF)は、重大な死亡事故の発生により、東京女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院の承認が取り消されたことを受け、塩崎恭久厚労相を本部長として設置された。TFは6~9月、全国84の特定機能病院に集中立ち入り検査を実施。今回の改善策(別掲)は、その結果を踏まえたもの。
●「高度な医療には高度な安全管理」を理念に
改善策では、まず特定機能病院の理念を明確化。高度医療の提供には高度な医療安全管理体制の確保が求められる旨を、医療法に位置づける。
医療安全管理体制では、医療安全担当の副院長の配置を義務化。医療安全管理部門には専従看護師だけでなく、専従医師・薬剤師の配置も義務化する。
現場レベルでは、手術時の血栓予防策実施率など診療内容のモニタリングを平時から行い、医療安全管理への意識を徹底。事故防止に向けて、全ての死亡事例の医療安全管理部門への報告を義務化する。インフォームド・コンセントの際には、説明医師以外の立ち会いを原則とし、定期的に診療録等の内部監査を実施するよう求める。
これらの体制が機能しているかをチェックする仕組みとして、過半数が外部有識者などで構成される監査委員会の設置を開設者に義務づける。
また、その医療機関で前例がなく、死亡などのリスクが高い新規医療技術の導入については、国が標準的なルールを示すことも盛り込まれた。
改善策を踏まえ、厚労省は特定機能病院の承認要件の見直しに向けた検討を始め、来年度以降順次、医療法や関係省令・通知の改正を目指す。
●大臣が大学病院長の選出法に「問題意識」
ガバナンス改革の対象は、医療安全の管理者である病院長の位置づけにも及びそうだ。
塩崎厚労相は5日の会合で、「50あまりの大学病院では病院長が選挙で選ばれ、2年程度で交代する。選挙制が医療安全確保につながっているのか、問題意識を持っている」と表明。さらに「大学病院には常識とは違った意思決定体系があるようだ」とし、「過去のしがらみと決別する改革」の断行を求めた。
大臣の「問題意識」も踏まえ、同省は大学病院改革を議論する新たな検討の場を設ける方針。