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日医が改正案を公表 - 医療界から異論も「単独改正はありえない」 [医師法21条]

No.4793 (2016年03月05日発行) P.9

登録日: 2016-03-05

最終更新日: 2016-11-28

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(概要) 日本医師会は2月24日、異状死体の警察署への届出を定めた医師法21条の改正案を公表。解釈の混乱を収めるため、届出対象を「犯罪と関係ある異状」に変更するよう提言した。

改正案は、会内の「医事法関係検討委員会」(委員長=柵木充明愛知県医師会長)が横倉義武日医会長に答申したもの。23日の日医常任理事会で、これを日医の見解として取り扱うことが決まった。
医師法21条の解釈を巡っては、2000年に厚労省が国立病院向け指針の中で医療過誤を警察署に届け出ることを指導し、混乱が続いた。しかし最高裁は04年、医師法21条の「検案」とは「死体の外表を検査すること」と判断。14年には当時の田村憲久厚労相が「(医師法21条は)医療事故を想定しているわけではない」と国会答弁し、混乱の収束を図った。
こうした中で、医療事故調査制度の創設を盛り込んだ改正医療法が14年に成立。改正医療法の附則の中で、事故調のあり方のほか、医師法21条の届出等について検討を加え、その結果に基づき、法律の公布後2年以内に必要な措置を講ずるとされた。その期限が今年6月であることから、横倉会長が委員会に医師法21条について検討を求めていた。

●改正案は社会的混乱を正常に戻すため
日医委員会の答申によると、医師法21条の立法目的は、犯罪捜査の端緒を警察に提供するという公益上の要請から医師に課せられたものであり、医療事故死を刑事捜査する端緒を得るための制度ではないと強調。その上で、不適切な解釈運用に起因する社会的混乱を沈静化し正常な状態に戻すため、改正案(別掲上)を提言した。
なお、「犯罪と関係ある」の条文案は死体解剖保存法の先例に倣ったもの。24日の会見で今村定臣常任理事は、「(会内でも条文案が)妥当かどうか決着していない」とし、他によりよい表現方法があれば採用する考えを示した。改正案は今後、与党・自民党の議論の場で主張していくという。

●業務上過失致死傷罪の適用問題と同時解決を
これに対し翌25日、日本医療法人協会の医療安全調査部会が見解を発表(別掲下)。「医師法21条の改正そのものに反対はしない」としながらも、「同法改正は業務上過失致死傷罪の医療への適用問題と同時解決すべきもの」との考えを示した。
さらに、医師法21条について医療現場では旧来の解釈に帰りつつあるとの認識を示し、「医師法21条と切り分けることで成立した事故調の運用が始まったばかりの重要な時期に同法の改正を云々するのは、いたずらに混乱を招くばかり」と危惧した。
会見で小田原良治医療安全調査部会長は、附則について「一般的に“見直し規定”と呼ばれているが、“法律を見直す”とは書いていない」と強調し、「21条単独改正はありえない」と訴えた。

【記者の眼】事故調がスタートしたのは昨年10月。法改正を議論するにはあまりに実施期間が短い。現状でも警察案件ではない医療事故を警察署に届け出る例があるようなので、まずは医師法21条の正しい解釈の徹底が必要だ。(N)

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