遠近両用の多焦点眼内レンズを挿入する白内障手術について、高橋浩日本医大院教授が2月24日、日本眼科医会の記者懇談会で「単焦点レンズより問題症例が多く、一部で称揚されるような“夢のレンズ”ではない」と指摘した。
高橋氏によると、自由診療である多焦点レンズは、手術を希望する患者の視力改善への期待が高い一方、コントラストの低下や中距離の焦点の合いにくさなど短所について理解を得ることが難しいという。また、多焦点レンズの手術件数の多い病院で行った調査では、患者の5割が術後も眼鏡を使用し、6%は半年以内に眼内レンズを単焦点に交換していた。
これを踏まえ高橋氏は、「熟練眼科医の集う施設でも患者満足度は必ずしも高くない。現場では、見え方に細かくこだわる患者には手術を勧めていない」と述べた。
多焦点レンズの保険適応を目指す動きにも触れ、「今は患者が少ないが、保険適応されれば問題症例は急増する。引き換えに単焦点の点数が下がる恐れもある」と懸念を示した。