【概要】厚生労働省は6月24日、医療事故調査制度の改正省令と関係通知を発出した。医療機関の管理者が施設内の死亡・死産事例を確実に把握するための体制を確保することを省令で明確化したほか、支援団体が共同で「協議会」を組織することができるとした。
昨年10月からスタートした医療事故調査制度は、「医療事故の再発防止・医療安全の確保」を目的に創設された。医療事故が発生した医療機関は原因を明らかにするために院内調査を行い、調査結果を第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に報告し、遺族に説明することが義務づけられている。医療事故の定義は「医療に起因または起因すると疑われ、予期しなかった死亡・死産」で、その判断は医療機関の管理者が行う。センターへの報告件数は6月までの9カ月間で285件となっている。
事故調の制度創設を規定した改正医療法には、公布後2年以内に必要な措置を講ずるとの附則が設けられていることから、自民党の作業部会が見直しの提言をまとめた。改正省令はこの提言に基づくもの。
改正省令(表)では、死亡・死産を確実に把握する体制を管理者が確保することを明確化。さらに、全国の医療事故調査等支援団体が情報共有や意見交換を行う「協議会」を共同で組織することができるとした。
関係通知によると、支援団体の協議会は、地方組織として各都道府県に1カ所、中央組織として全国に1カ所設置されることが望ましいとし、医療事故の判断に関しては「標準的な取扱いについて意見交換を行う」とした。
また、同制度は遺族が医療事故と判断してセンターに報告する仕組みはないものの、遺族への相談対応を改善するため、センターに遺族から相談があった場合には、遺族の求めに応じて相談内容を医療機関の管理者に伝達する。
●井上弁護士「医療事故の判定にかかわらず、問題点の摘出を」
改正省令については、多数の医療機関の顧問を務める井上清成弁護士が2日に都内で行った講演で、死亡・死産を把握する体制確保の重要性を説明した。井上氏は、「医療安全向上の要は医療機関の管理者」と強調。その上で、すべての死亡症例を管理者の下で一元的にチェックすることで、「“医療事故”の判定の如何にかかわらず、症例ごとに問題点を摘出して改善することが大事」と述べ、特にシステムエラーに着目した改善策を検討する必要性を指摘した。さらに、こうした個々の医療機関の取り組みが日本全体の医療安全を向上させ、「事故調を社会の中で定着させることにつながる」との考えを示した。
【記者の眼】
改正省令では、医療安全の確保に関して、医療機関の管理者の役割が改めて強調された。ヒューマンエラーは防ぎきれない。医療事故のリスクに組織として向き合い、リスクの芽を摘む対策を個々の医療機関の事情に合わせて検討することが必要だ。(N)