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保健指導で3~4割がメタボ脱出 さらに実施率の向上図ろう [お茶の水だより]

No.4697 (2014年05月03日発行) P.13

登録日: 2014-05-03

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▼特定健診でメタボリックシンドロームと判定され保健指導(積極的支援)を受けた者のうち、男性で約3割、女性で約4割が、翌年度にはメタボから脱していたことが、厚生労働省のワーキンググループ(WG)による検証で明らかになった。WGは、同省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」の下に設置。2008~11年度の4年分のデータ(分析対象:約20万~30万人)を用いた検証を行っている。
▼例えば、ある50代前半の男性。保健指導(積極的支援)実施前の腹囲は91.2cm、体重75.1kg、血糖(HbA1c)5.31%、血圧130.5/83.3mmHg、脂質(中性脂肪)191.3mg/dlであったが、実施後にはそれぞれ、88.9cm(△2.3cm)、73.2kg(△1.9kg)、5.27%、128.6/81.9mmHg、164.0mg/dlに改善している。このように、健診でメタボ基準または予備群に該当すると判定され保健指導(積極的支援)を終了した者のうち、男性では約2~3割、女性では約3~4割で検査値が改善している。改善効果は年齢階層別では大きな違いはないが、性別でみると、女性の方が男性より効果が高い傾向。なお、追加リスク(血糖・血圧・脂質)が1つのみ該当し、喫煙歴のない者を対象とする動機づけ支援の終了者では、男性で約2~3割、女性で約1~2割に改善がみられた。
▼これらの結果について厚労省は、「一定の効果が確認できた」と評価している。ただし、これらは特定健診を受け、保健指導を終了した者に関する検証。2011年度の特定健診の実施率は対象者の45.0%、保健指導終了者に至っては15.9%にとどまっているのが実態だ。特定健診の実施率は、保険者種類別では健保組合や共済組合において高く、市町村国保や国保組合、協会けんぽ、船員保険において低いという二重構造となっており、保健指導については、船員保険や国保組合で特に実施率が低い。また、保健指導を委託で実施している医療保険者も多い。
▼厚労省は、特定健診・保健指導の医療費適正化効果についても今年度中に検討を行う方針。その効果が具体的に明らかになれば、実施主体である医療保険者にとって大きなインセンティブになるだろう。厚労省や都道府県の各保険者協議会は、「保健指導で3~4割がメタボからの脱出を果たした」という今回の検証結果を国民に広くアピールするとともに、対象者が保健指導を進んで受けたくなるような工夫、利用勧奨の取り組みについて、好事例の収集と周知を行い、実施率向上につなげる必要がある。

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