▼健診全般のあり方を検討する議論が現在、厚生労働省の有識者会議で進められている。検討の中では特定健診の腹囲基準など、健診項目に関するエビデンスも取りまとめられる予定だ。近年海外で行われた研究では、検診を行い心血管疾患のリスク保有者を5年間の生活指導を行った群とそうでない群に分けて比較した結果、死亡率や虚血性心疾患の発症率には有意な差がなかった(BMJ. 2014;348:g3617)。
▼有識者会議の検討の対象からは外れるが、特定健診・保健指導の医療費への影響を示すデータもある。昨年6月に厚労省が公表した調査では、2008年度に特定保健指導の対象となった者のうち、保健指導のすべてのプログラムを終えた者を「参加者」、08~11年度に一度も特定保健指導を受けなかった者を「不参加者」と定義。高血圧症・脂質異常症・糖尿病の3疾患に関する年間1人当たり入院外医療費は、積極的支援を受けた参加者では不参加者に比べ、5340~7550円低かった。しかし積極的支援のコストは約1万8000円と削減効果を大幅に上回る。特定健診・保健指導を巡る今後の議論が注目される。
▼最近、疾病予防や健康づくりを保険者に促す動きが強まっている。2018年度からは疾病予防・健康づくりによる医療費の抑制を促す国保の「保険者努力支援制度」が開始。他の保険者に対しても、高齢者の医療費を削減するため、予防や健康づくりを後押しする仕組みが導入される。重複頻回受診者に対する訪問指導の実施率などを評価指標とし、保険者にインセンティブとペナルティを与える。
▼特定健診・保健指導は医療費抑制の実績を基に保険者にペナルティを与える制度の嚆矢といえる。コストをかけて新たな仕組みを導入するなら、特定健診・保健指導の検証が必要だ。