株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

重症虚血肢に対する血行再建

No.4781 (2015年12月12日発行) P.60

東 信良 (旭川医科大学循環・呼吸・腫瘍病態外科学分野 血管外科学講座教授)

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

わが国には透析患者数が多く,重症虚血肢(crit-ical limb ischemia:CLI)でのdistal by-passが(1)末梢吻合部の性状不良(狭小,石灰化),(2)静脈グラフトの欠如,などの理由により断念される場合がありますが,どのようにしたらバイパス手術完遂率を上げられるでしょうか。また,実際にどのくらい完遂することが可能でしょうか。旭川医科大学・東 信良先生のご教示をお願いします。
【質問者】
宮本伸二:大分大学医学部附属病院心臓血管外科教授

【A】

ご指摘の通り,わが国のCLIの約半数は維持透析患者であり,動脈の高度石灰化,末梢run-off不良,創治癒不全,生命予後不良など,血行再建を難しくする要素を複数持っている例がほとんどであり,特殊なノウハウが必要です。
足部の単純X線写真と動脈造影(digital subtraction angiography:DSA)写真を見比べて,石灰化の隙間があり,かつ,できるだけ末梢run-offの良い動脈を末梢吻合部として選択しています。透析CLI例へのDSAについては,動脈病変が高度であると中枢で放った造影剤が足部まで流れてこないこともめずらしくないので,末梢吻合部を判断するDSAは,できればより足部に近いところ(膝窩動脈など)から術中に高精細のDSA装置を用いて行うことが望まれます。
動脈遮断が難しい場合が多いので,内腔にバルーンを挿入し,さらにCO2 ブロワーなどを併用して,術野を確保しています。また,針も貫通しやすいタングステン針を使用するなど,工夫を重ねています。
静脈の質については,術前にエコーで四肢の表在静脈評価を行いますが,静脈不良でバイパス手術が完遂できない症例は,初回バイパスではほとんどありません。
バイパス手術を完遂できない例は非常に稀ですが,近年,足部末梢まで病変が高度であったり,カテーテル治療による末梢動脈への塞栓などで末梢血管床が失われた例で,バイパス困難であった例を数%経験しております。
透析CLI例にバイパス手術を初めて実施する場合は,上記のようなノウハウを蓄積している施設を見学や短期研修に利用することをお勧めいたします。

関連記事・論文

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top