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難治性気管支喘息に対するサーモプラスティ治療とは【気管支鏡下にカテーテル挿入して気管支壁を加熱し肥厚した平滑筋を減少させる画期的治療法】

No.4807 (2016年06月11日発行) P.57

放生雅章 (国立国際医療研究センター病院呼吸器内科 医長)

登録日: 2016-06-11

最終更新日: 2016-12-16

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【Q】

難治性重症気管支喘息において,「気管支サーモプラスティ」という治療が新たに保険適用になりました。これはどのような治療でしょうか。難治性といっても様々ですが,どのような患者が対象になるのでしょうか。また,費用についても具体的に,国立国際医療研究センター病院・放生雅章先生のご教示をお願いします。
【質問者】
吉村千恵:大阪赤十字病院呼吸器内科副部長

【A】

気管支焼灼術(サーモプラスティ)は,高用量吸入ステロイドおよび長時間作用性β2 刺激薬を使用(わが国の「喘息予防・管理ガイドライン2015」では治療ステップ4に相当)していても,喘息症状がコントロールできない18歳以上の重症喘息患者を治療するための気管支鏡手技です。米国では既に2010年に承認され,わが国では2015年4月に保険収載されました。
具体的には,内径3~10mmの観察可能な気管支を対象に気管支鏡下でカテーテルを挿入,バスケットを開いて65℃の熱エネルギーで気管支壁を加熱し,肥厚した気道平滑筋を減少させるという画期的な作用機序の治療法です。手技実施後2週間程度は喘息症状の悪化を認めることが多くありますが,施行3日前からプレドニゾロン30~50
mg/日を投与することで,比較的安全に施行可能です(添付文書ではプレドニゾロン50mg/日相当のステロイド投与を推奨)。長期的にはこれらの症状は改善しており,また1年目に認められた増悪や救急外来受診などの減少の状況は少なくとも5年間は継続することが報告されています。
適応は気管支鏡手技が可能な重症持続患者とされていますが,活動性呼吸器感染症の罹患者や,過去14日以内に喘息増悪または経口ステロイドを用量変更した患者は除外するとされています。
現在までわが国におけるサーモプラスティ施行例は約35例であり,日本人における安全性・有効性に関するエビデンスを築き上げるにはまだ時間が必要です。したがって現実的には,経口ステロイド依存性やオマリズマブ投与中の患者で,現在はそれらの治療である程度のコントロールが得られており,サーモプラスティの施行によりさらにコントロールが改善し,それらの薬剤の減量が期待されうる患者が一番良い適応かもしれません。また,1秒率が50%以下の症例では効果が限定されるとの報告もあり,私たちの施設で施行した8例中でも,50%以下の症例では十分な効果が得られませんでした。
以上より,1秒率60~80%前後が最も良い適応と考えますが,今後,治療効果の予測因子が明らかになれば,適応となる患者がより明確になり,施術も行いやすくなると思います。
費用としては,手技料として気管支狭窄拡張術が1回当たり10万1500円,サーモプラスティ用カテーテル(32万3000円)は1回の手術につき1本を限度とし,また同一患者につき3本を限度として算定されます。したがって,1回の治療〔(手技料10万1500円+カテーテル代32万3000円)×3回〕で約130万円となるので,3割負担では約40万円の自己負担となります。このため,あらかじめ高額療養費制度を利用するように患者には説明しておいたほうがよいでしょう。
この医療費については議論があるところですが,オマリズマブのみならず今後発売予定である抗IL-5製剤や抗IL-13製剤などの高額な生物学的製剤(例:オマリズマブ150mgで4万5578円)を継続することと,サーモプラスティは一生に一度しか実施できないことを考えると,一定以上の効果が得られるのであれば決して高価ではないと考えます。

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