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緑内障患者への抗コリン薬使用

No.4770 (2015年09月26日発行) P.69

鈴木康之 (東海大学大学院医学研究科眼科学教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

緑内障患者に対する抗コリン薬使用は,開放性の場合は問題にならないが,閉塞性の場合は不可というのが最近の知見であると理解しているのですが,眼科や内科の医師の中でも様々な見解があるようです。どのように考えるべきでしょうか。 (群馬県 Y)

【A】

緑内障患者に対する抗コリン薬の使用は,多くの医師に誤解されています。結論から言えば,開放性(開放隅角緑内障)はもちろんのこと,閉塞性(閉塞隅角緑内障)を含め,ほとんどの緑内障症例に対して抗コリン薬を使用することは問題になりません。特に白内障手術を既に受けている症例であれば基本的に問題はありません。抗コリン薬の使用が問題になるのは,閉塞隅角緑内障および原発閉塞隅角症(緑内障性視神経障害を起こしていない原発閉塞隅角緑内障の前駆状態)の症例で,白内障手術をまだ受けておらず,さらにレーザー虹彩切開術などの治療も受けていない症例と,一部の特殊な重症例のみです。
緑内障は,特徴的な視神経萎縮により視野障害,視力障害をきたす疾患ですが,高眼圧がその原因および悪化要因として最も重要です。特に眼内の水分(房水)の排出経路である隅角が閉塞した場合,非常に強い眼圧上昇を起こし,急性緑内障発作の状態になります。このような急性発作を起こすのは,解剖学的に隅角の狭い症例であり,そのような症例に抗コリン薬を使用した場合,散瞳が生じることによって隅角閉塞が起きて発作を引き起こすことになります。白内障手術により隅角は開放されるため,白内障手術を受けている症例では抗コリン薬による隅角閉塞の可能性は基本的になくなります。
一方,白内障手術を受けていない閉塞隅角緑内障および原発閉塞隅角症でも,きちんと診断され,既にレーザー虹彩切開術などの治療を受けている場合は,散瞳による緑内障発作を起こすことはきわめて稀ですので,眼科医によりしっかり治療・経過観察されている患者であれば,抗コリン薬の使用に関してほぼ問題はありません。ただし,ごく一部の症例では処置がされていても緑内障発作が起こりうる例がありますので,より安全を期すためには使用にあたって眼科医に確認したほうがよいと思われます。

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