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血液透析の尿酸値急低下で痛風発作は起こる?

No.4777 (2015年11月14日発行) P.61

大野岩男 (東京慈恵会医科大学総合診療内科教授)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

尿酸値を急に下げると痛風発作を誘発すると言われています。血液透析では短時間で急激な尿酸値の低下が起こりますが,痛風発作は起きないのですか。 (埼玉県 S)

【A】

一般的に痛風発作(痛風関節炎)は,高尿酸血症が持続することにより,関節滑膜に生じた微小結節(尿酸ナトリウム結晶から成る微小痛風結節)から,尿酸ナトリウム結晶が脱落することで起こると考えられています。関節腔に脱落した尿酸ナトリウム結晶は白血球に貪食され,炎症性サイトカインが放出されて痛風発作が生じます。また,血清尿酸値が急激に低下すると,関節滑膜の尿酸結晶塊の結合がゆるくなり,結晶脱落が起きやすくなるので,痛風発作の再発や遷延を起こしやすいとされています。
わが国における末期腎不全時の痛風発作に関する筆者らの調査では,末期腎不全患者における痛風発作頻度は,透析導入2年前までは腎機能正常の高尿酸血症患者と同程度でしたが,それ以降は減少し,特に透析導入後には激減していることが明らかとなっています(文献1)。
透析導入後に痛風発作が激減する機序としては透析療法による体内尿酸プールの減少,炎症性サイトカインの除去,末期腎不全患者単球の炎症性サイトカイン産生能の低下,などが考えられています。したがって,これらが血液透析において,短時間で尿酸値の急激な低下があるにもかかわらず,痛風発作を起こしにくい理由であると思われます。
ここで体内尿酸プール量と痛風発作の密接な関連を示す事例として,体内尿酸プールが大きいと考えられる巨大痛風結節を持つ末期腎不全患者においては,血液透析ごとに頻回の痛風発作が誘発される症例が報告されています。したがって,血液透析患者においても,体内尿酸プールが大きい場合には,血液透析ごとに痛風発作が誘発される可能性があります。

【文献】


1) Ohno I, et al:Intern Med. 2005;44(7):706-9.

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