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アシドーシスで死に至る機序は?【細胞機能障害により病態悪化や治療抵抗性をまねく】

No.4781 (2015年12月12日発行) P.64

山田 勇 (兵庫医科大学救急・災害医学講座臨床講師)

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

アシドーシスが重度になると死に至る機序を,具体的に教えて下さい。 (兵庫県 K)

【A】

アシドーシスには種々の原因(疾患)があり,呼吸性と代謝性に区別されます。基本的にはアシドーシスが単独で存在することはなく,原疾患と併存しています。アシドーシスを直接的な死因として機序を説明することは正しくありません。とはいえ,アシドーシスにより生じる重度のアシデミアは生体にとって不都合となりえます。具体的には,(1)ATP依存性3Na+/2K+交換ポンプの停止とATP依存性H+/K+ポンプによる細胞内から細胞外へのK+移動による高カリウム血症,(2)心筋では活動電位の低下,β受容体減少に伴うカテコラミン不応性(文献1),Ca2+の感受性低下に伴う収縮力低下(文献2),(3)解糖系酵素の活性低下による糖代謝阻害から高血糖,(4)アデニル酸シクラーゼ阻害から細胞内情報伝達物質であるcyclic AMPの減少,(5)神経系ではグリア細胞腫脹など細胞機能障害とCa2+チャネル透過性低下による興奮性シナプス伝達抑制(文献3),などが報告されています。
このように,アシドーシスは代謝,膜輸送,膜コンダクタンス,細胞内情報伝達などで細胞機能障害を引き起こします。臨床的には心機能低下に伴う低血圧など循環不全,致死的不整脈,中枢神経障害に伴う昏睡など意識障害などです。これらが原疾患による病態のさらなる悪化や,治療抵抗性をまねき死に至ると考えるのが妥当でしょう。

【文献】


1) Marsh JD, et al:Am J Physiol. 1988;254(1 Pt 2):H20-7.
2) Orchard CH, et al:J Physiol. 1991;436:559-78.
3) Drapeau P, et al:J Gen Physiol. 1988;91(2):305-15.

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